高専ロボコンデータベースのライセンスと著作権 その11
先日、毎年ニコニコ超会議を主催しているニコニコ動画などでお馴染みの株式会社ドワンゴより「ニコニコ超会議2017」のブース情報が公式に発表されたようです。「超ロボコン」と称して、最近活躍したロボットによる「輪投げ」や「縄跳び」に興じることができるそうです。入場チケットは既に販売されているそうです。「スプレもん」の展示・実演はないんでしょうか?
✨超歌舞伎、大相撲 超会議場所、超ロボコンなどブース情報が公開されました✅https://t.co/6anusQthih#超会議2017 #chokaigi pic.twitter.com/nczESQrvZJ
— 【公式】超会議2017@4/29,30 (@chokaigi_PR) 2017年1月17日
さて、前回の続きです。
先例とCreative Commons
高専ロボコンに関する公開されている「データ」のうち、公開データ用のライセンスを適用している先例がありましたので、参考にしてみたいと思います。
先例1:『-高専ロボコン歴史館 Web公開版-』
有明高専OBのzono氏が版を重ねている高専ロボコンの各大会ごとの概要と注目ロボットのエピソードが添えられた文書が公開されています:
高専ロボコン歴史館 (第29回時点) Ver1.11 - Docs.com
データベースではなく文書ですが、ライセンスに Creative Commons を適用しており、参考になります。
この文書が適用しているライセンスは、Creative Commons の BY-NC-ND と略記されるもので、日本語で表せば「表示-非営利-改変禁止 4.0 国際」となります。ライセンス条項*1をもう少し詳しくみていくと次のようにより具体的に制限されています:
- 表示:著作者の名前を表示し、作品のタイトルを表示し、作品にアクセスできるURLを表示し、その作品のライセンスの種類を掲載し、ライセンスへのリンクを貼り、そして、すべての著作権表示を作品と関連付けられた形で、漏れなく掲載すること。
- 非営利:営業目的(利益を得ることが目的)で利用できない。
- 改変禁止: リミックスしたり、改変したり、あるいはこの資料をベースに作ったりした新しい作品を頒布してはいけない。
表示については、Microsoft の OneDrive システム上で全て表示されています。URLについてはブラウザに表示されていると言った方が正確でしょう。著作権者のサイトではなく Microsoft が行っていることなので、こういった表示が必要になると思います。
非営利に関しては、Creative Commons の場合、他の条項に従属していないので目的に合わせて任意に設定することができます。
改変禁止も非営利と同様に独立しており、任意に設定できます。
非営利と改変禁止を設定することで、無用な問題を排除しつつ多くの方に読まれるようにしておけるでしょう。
著作権上、日本においても、創作された文書は強力に保護されていますから、このように適切なライセンスで公開することは妥当であると思います。
先例2:『各高専の高専ロボコン出場マシン残存数纏め』
前掲の文書と同じくzono氏が版を重ねて公開しているのが次の「文書」です:
各高専の高専ロボコン出場マシン残存数纏め Ver1.01 - Docs.com
この文書もライセンスに Creative Commons を採用していますが、"BY"(表示)しか示しておらず(CC BY *2)、前掲の文書と同様に著作者(zono氏)などの表示さえしてれば自由に使えることになっています。つまり、複製や再配布ができ、リミックスしたり、改変したり、あるいはこの資料をベースに作ったりした新しい作品*3を頒布することができます。これは文書の詳細に
NEPが行っていた調査結果を入手したため、それを受けた改訂を実施しました。
とあり、調査結果を反映した文書・資料を相互に融通し易くするためなのではないかと推測しています。この件に関してはご本人からコメントを頂きたいと思います。
この「文書」は、何かを施せば簡易なデータベースとしても機能するかもしれませんが*4、スプレッドシート上で作成された1枚のシートです。前出で触れたとおり、日本ではデータベースに自然に著作権やデータベース権が与えられたり保護されたりしません。また、現存しているロボットを調べて各項(カラム)に当てはめていくだけなのでデータベースとしては創作性は認められ難いでしょう。これを日本で著作権的に保護しようとすれば、データベースではなく「文書」としておくのが妥当だと思います。
Creative Commons 4.0
前掲の二つの先例で用いていた Creative Commons 4.0 の詳細については Creative Commons やその他の解説に委ねるとして、データベースに関係する箇所に注目します。
データベース権
先例で用いられていた Creative Commons バージョン4.0からデータベース権に対応しました:
少し詳細に言えば、データベースも含めたデータベースに含まれているような最小単位のデータのオープン化・公開に Creative Commons 的な対応をしたと言ってよいでしょう。
実際にライセンス条項をみてみると、第4条にデータベース権が明記されています。Creative Commons は最新のライセンスを適用することを推奨していますし、もし日本でデータベース権が認められるようになったとしたら、Creative Commons 4.0 を利用していれば何もせずとも自動的にデータベース権に対応できることでしょう。
次に続きます。
参考
- PC情報蓄積庫: クリエイティブコモンズの作品の著作者クレジットを表示する方法
- 丁寧に解説されています。
- CC 4.0 時代のオープンデータとライセンスデザイン 中川 隆太郎 弁護士(骨董通り法律事務所)情報の科学と技術 65 巻 12 号,509~514(2015)
- オープンデータ/データベース権と各国の状況、そしてCC 4.0についての展望がまとめられています。
*1:本当のライセンス条項は
Creative Commons — Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International — CC BY-NC-ND 4.0
にあります。日本語版は
クリエイティブ・コモンズ (Creative Commons) — 表示-非営利-改変禁止 4.0 国際 — CC BY 4.0
にあります。
*2:本当のライセンス条項は
Creative Commons — Attribution 4.0 International — CC BY 4.0
にあります。日本語版は
クリエイティブ・コモンズ (Creative Commons) — 表示 4.0 国際 — CC BY 4.0
にあります。
*3:法律用語などでは翻案というそうです。
*4:OneDriveにGoogle Drive/Google Apps Scriptのようなものがあれば可能でしょう。