高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

一関高専B 百式砲(ヒャクシキホウ)

 この記事で扱うロボットの名前、そして外装に施されたカラーリングから懐かしさを覚えたのは私だけではないでしょう。 あの空想上のロボットに由来してはいないそうですが、二度の全国優勝と一度の準優勝経験がある一関高専から、「まだだ!まだ終わらんよ!」という声が聞こえてきそうで、第29回大会以降に捲土重来をしそうな気がしてきます。

試合内容

地区大会

初戦1回戦第1試合

 福島高専Aチームの「おくとばす」と対戦。東北地区大会の初戦でVゴールを披露することは出来なかったが、開始17秒で7本のポールに輪を入れ、7対2と大量リードを築いた。しかし、釣竿を利用した射出装置は伸ばした後に縮めて輪の装填を完了するのに40秒以上掛かってしまうため、その間に追いつかれてしまう可能性が非常に高い。実際、この試合では、一関は装填後にもう一度Vゴールを目指したが加点すらできず、福島の「おくとばす」が着実に1点ずつ差をつめてきて、2分21秒には6対7と1点差に追いついていた。試合も残り30秒、一関は防御に徹した。機体を壁とし、迎撃用の輪を放って、福島の輪の進入を防ぎ、一点差を守りきり、勝利した。

2回戦第1試合

 仙台高専名取キャンパスAチームの「Re:act(リアクト)」と対戦。最初に装填した輪だけでVゴールをしておきたかったかもしれないが、開始20秒でポール8本に輪を入れて0対8。あと1本足りなかった。装填に1分以上かかってしまったが、対戦相手の不調もあり、2対8のままで、仙台名取は自陣ポールにかかりきりであったので、焦る必要はなかったのであろう。1分35秒、残りの相手陣中に輪をいれて東北地区大会初めてのVゴールを披露して勝利した。

準決勝第1試合

 秋田高専Bチームの「BLUE HAWAII(ブルーハワイ)」と対戦した。BLUE HAWAIIには前の試合までVホールはなかったものの、2回戦までの得点の合計が百式砲に次いでおり、油断できない対戦相手であっただろう。

 序盤、一関は自陣ポール2本を外してしまい、直ぐにスタートゾーンへ。その間に先に秋田に自陣ポール3本を決められ1対3とリードされてしまった(25秒)。

 外した自陣ポールだけを再装填し、30秒過ぎにスローゾーンへ戻った一関は再び自陣ポールに輪を入れようとしたが1本しか入らずまた直ぐにスタートゾーンへ。それに対し、秋田は相手陣左と中央2.5m左に輪を入れており、2対5と差が開いていた。

 1分24秒、自陣ポールの装填から戻っていた一関は試合中盤にしてやっと自陣ポール3本目に輪を入れることができた。試合中盤にして一関に逆転の機会が訪れた。先ずは1分38秒に、一関は中央ポール2.5m左と中央3mに入れて5対5の同点に追いつくと、直後の1分42秒には相手陣左右に入れて7対5と20秒足らずで、Vゴールとはならなかったが、逆転の上に2点差もつけることができた。実はこのとき、自陣ポール中央用の射出装置に防御体制をとらせていなかったために、相手陣中央用の射出装置と干渉してしまっていた。その干渉がなければ、輪が入って3点差をつけていたかもしれない。また、そんなミスをしたほど、一関は焦っていたのかもしれない。

 一関は装填に時間が掛かることを考慮して、自陣ポールの前で防衛することを選択した。ポールの前で動いて秋田に狙いを定め難くさせたり、放ってきた輪を迎撃用の輪で打ち落とそうとした。*1そして試合時間終了。間際に秋田が相手陣中に輪を入れたものの、7対6で一関は辛うじて勝つことができた。仮に、秋田が中央ポール3本目を入れてからであったら、同点とされるところであった。

決勝戦

 秋田高専Aチームの「ワッカマン」と対戦した。最初の装填でVゴールが出来なければ、秋田の前の試合のように秋田の調子が上がって得点差で負けてしまうか同点にされてしまう可能性が一関のメンバーの頭にもたげていたかもしれない。

 試合が始まったが、一関は動けずにいた。秋田が自陣ポール3本を決め(25秒)、さらにリードを広げようと輪を放ち続けていた一方で依然とスタートゾーンに留まったままだった。

 何の問題だったのかわからないが、39秒に一関はスタートゾーンを出ることが出来、Vゴールへの射出位置に着くことが出来た。自陣ポール3本、中央ポール3本、相手陣ポール3本に次々と輪をいれ、Vゴール。試合開始直後にスタートゾーンを飛び出せず、最悪負けを覚悟したかもしれないが、東北地区大会決勝を最初の装填でVゴールで勝ち、一関の百式砲は華々しく優勝を勝ち取った。

全国大会

2回戦第3試合

 例年になく試合巧者揃い、同型機揃いとなった全国大会で、2回戦から対戦というシード権を幸運にも得て、優勝目指して臨んだ一関。地区大会で、一度だが、防御装置を掻い潜られた反省からか、防御装置が自陣ポール側に追加され、さらに輪の射出を邪魔されないように相手陣側にも防御装置が備えられ、一関高専なりの万全の体制で挑んだようだった。*2

 対戦相手は都立産技高専荒川キャンパスの「荒鯊(アラハゼ)」であった。彼らは関東甲信越大会では全地区大会で最速の12秒を記録しており、Vゴールの速さではNo.1の性能を持っていた。一関の百式砲と同型機として分類されてもおかしくはなく、百式砲も地区大会決勝では、スタートゾーンを飛び出してから18秒でVゴールできていたことから、どちらかが、Vゴールで、しかも最短10秒台で勝つ可能が高いと衆目一致するところであった。

 試合開始。開始7秒で自陣ポール1本を取りこぼした荒川が直ぐに輪の装填に戻り、一関が優勢になったが、その一関も開始14秒で中央ポール1本、相手陣3本を取りこぼし、装填に戻っていった。この時点で5対2。両者こんな始まりになるとは思ってもみなかったであろう。

 一関は荒川の様子を見ながら慌てず装填をしていた。一方、荒川は不利な状況を打開するために一刻も早く自陣ポールに輪を入れたかったのだが、失敗してまた装填しにスタートゾーンへ戻ってきていた。まだまだ流れは一関にあった。

 試合中盤、装填が終わった一関、そして荒川もスローゾーンへ出ていき、1分24秒に同時に両者に得点が入った。一関は中央ポール3m、荒川は自陣ポール3本目に入れて、6対3。そしてここから流れが変わり始めた。

 1分26秒に一関が相手陣右に輪を入れて7対3とリードを広げたが、直後の1分29秒に荒川が中央3本を決めて7対6と差を一気に縮めてきた。そして両者装填にもどったが、ここから荒川が大きい輪を装填し始めた。荒川が先にスローゾーンへ出て、1分53秒に相手陣左に大きい輪を入れ、7対7の同点に。荒川はまたも大きな輪の装填にスタートゾーンへ戻った。

 試合も後半2分過ぎ、得点上振り出しに戻った状況で、一関は一度にVゴールを狙う策で、荒川は1ポールずつ入れていく策で、スローゾーンとスタートゾーンの往復をしながらそれぞれ輪を放っていたが、ポールに全く入らず、7対7のまま試合を終えてしまった。規定により審査委員判定に持ち越され、0対5で一関は負け、大会を終えた。

一関高専B 百式砲(ヒャクシキホウ) 画像URL

東北地区大会 出場校データチェック ページより

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特徴

  • 移動システム:四輪メカナムホイール
  • 射出エネルギー源と格納方法1:圧縮空気(ペットボトル)
  • 射出装置1:釣竿押出カタパルト(自陣左右)x2
  • 射出装置2:釣竿押出カタパルト(オーバースロー型)(自陣中)x1
  • 射出装置3:釣竿押出カタパルト(中央)x3
  • 射出装置4:釣竿押出カタパルト(相手)x3
  • 照準/測位システム:なし(目視)
  • 通信システム:RC(周波数帯は?)
  • コントローラー:RC用プロポx2
  • 操縦者:2名
  • 自律機能/自動機能:未確認
  • 妨害装置:自陣ポール中用の射出装置が射出後に防御装置になる。相手の輪の迎撃専用の射出装置を2つ持っている。全国大会向けに輪を板からなる自陣ポール防御用部品が追加された。

妨害装置

 防御機能にも重点を置き、その装備を最も充実させた機体は一関高専百式砲としてよいのではないか。その理由として先ず挙げたいのが、自陣ポール中央用の射出装置が射出後に自陣ポールに相手の輪が入るのを防ぐために機能である。それは全国でも多くはない。次に百式砲の防御について最も特徴づけている相手の輪を空中で迎撃するためだけの射出装置を挙げる。迎撃専用に備えていたのは全国でもこの機体だけである。しかもそれが二門も搭載されていた。全国大会では、他地区の試合内容に影響されたのか、自陣ポールを守る部品を増やして幅を広げてさらに輪を付け足すようにしていたり、射出の邪魔をされないように相手陣側に防御壁をつけたりしていた。*3少なくとも二種三つの妨害装置と、一種一つの相手の妨害阻止部品が取り付けられていたと認識できるだろう。

 実際に、東北地区大会では秋田の「BLUE HAWAII(ブルーハワイ)」の連続得点を防ぎ、全国大会では都立産技高専荒川キャンパスの「荒鯊(アラハゼ)」の輪が入るのを阻止していた。また、迎撃専用の輪は打ち落とした実績がなくとも、打ち落とされる可能性があるだけで、十分に抑止効果が働いたとみても良いだろう。

 不思議なのは、全国大会に進出した他のチームは大きい輪を用意するなど得点機能の強化を図ってきたのに対し、一関は防御面の強化のみをしたのはどういう考えに基づいていたのか知りたいところである。中央ポールで複数本掛けが狙える輪が一本でもあったら、判定負けにならずに、得点差で勝つことが出来たかもしれない。 

MG 1/100 MSN-00100 百式 (機動戦士Zガンダム)

MG 1/100 MSN-00100 百式 (機動戦士Zガンダム)

 

*1:映像の実況では効果があったと言及されていますが、スロー再生すると防御装置でもある自陣ポール中央用射出装置に当たって弾かれていたことが確認できます。

*2:大きい輪を用意しなかったのは何故だろう?

*3:関東甲信越地区大会の決勝を見てから追加の決断をしたのだろうか?