高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

鈴鹿高専A ピーチ(ピーチ)

試合内容

 優勝候補や勝ち上がって欲しい面白ロボットが初戦で敗れることは高専ロボコンではよくあることである。今回の四国地区大会でも香川高専高松キャンパスの「Beehive(ビーハイブ)」がそうであったように。彼らは全国大会推薦されて救われたが、鈴鹿高専AチームのピーチはBチームが優勝してしまったがために全国大会に進むことは叶わなかった。

 その初戦は、1回戦第2試合。金沢高専Bチームの「飛花輪(ヒカリ)」との対戦。テストラン中に、ほぼ自動で1分32秒のVゴールを披露していただけに期待が大きかったのだろうが、スタート直後から鈴鹿のピーチは動かない。20秒過ぎに動き出し、34秒で自陣ポール2本目に輪をいれて0対2とリードするも鈴鹿のピーチはとまってしまう。止まっている間に金沢に追いつかれ2対2の同点(38秒)となる。鈴鹿は堪らずリペアを宣言し、金沢がスタートゾーンへ戻るのを待つ。

 1分50秒過ぎに鈴鹿は再スタートするが今度はロボットが暴走を始めた。一方で金沢は何度か自陣ポールに輪を入れようとするが入らなかった。そうしているうちに試合時間の3分が経過し、2対2の同点であったため、審査員判定となり、2対1で鈴鹿のピーチは敗れてしまった。

鈴鹿高専A ピーチ(ピーチ) 画像URL

東海北陸地区大会 出場校テータチェック ページより

上記サイトの都合で画像が閲覧できないことがあります。

特徴

  • 移動システム:三輪オムニホイール
  • 射出エネルギー源と格納方法1:二次電池
  • 射出エネルギー源と格納方法2:未確認(二次電池?)
  • 射出エネルギー源と格納方法3:未確認(二次電池?)
  • 射出装置1:電動押出カタパルト(自陣)x1
  • 射出装置2:三本掛け用カタパルト(?)(中央)x1
  • 射出装置3:カタパルト(?)(相手陣)x3
  • 照準/測位システム:ロータリーエンコーダーによる移動距離計測や光学式センサーなどによる位置制御など?
  • 通信システム:wifi?(2.4GHz?)
  • コントローラー:タブレットPC
  • 自律機能/自動機能:自ポール全自動,他は操縦者指示後自動
  • 妨害装置:なし

位置・方向制御と移動システム

 移動距離の検出にローターリーエンコーダーが利用されていることは地区大会番組の映像で確認ができたが、試合中に強い光を放つ照明の影響を受けたセンサーについては資料が全く無いので分からない。またこれらを利用した位置・方向の制御と移動システムについての構成も分からないし、想像もし難い。このチームの公表を待とう。

射出装置

 自陣ポールへの射出装置が非常に簡単に作られていて、好きである。輪を押し出しだして自由落下させるだけの簡単なものだが、それで十分であろう。

 中央ポールへは三本掛けしか考えていないところも自陣ポールと合わせて割り切りがよく、好感を持っている。しかし、三本掛けを行うために射出装置を三つ組み合わせているところは同期という少し高度な技術力を感じさせる一方で、複雑になるという嫌いもある。

 全国でも珍しい機構でが、非常に似たものが幾つかある(例えば下記の二つ)。三本掛けが確実に行えるのはこのピーチだけではないだろうか? 

kosen-robocon.hatenablog.jp

 

kosen-robocon.hatenablog.jp

 試合では披露できなかったが、相手陣ポールへ飛ばした輪の飛形も良く、射出機構について是非とも知りたいところである。次の映像でその飛形を確認できるだろう:


2015高専ロボコン鈴鹿Aピーチ練習風景

戦略とコントローラー

 ピーチの練習風景映像を視聴して、全国優勝が狙えたロボットだったと私のように思う方が少なからずいると思っている。機体の「素質」がかなり良かっただけに、活躍ができなかったことが残念でならない。何故、自動と手動の二重の操縦系統を用意していなかったのか?勝つためではなく、自動で動くところを魅せたいとしても、自動で動かすための装置が作動しない確率はあるんだから、例えば1回戦で自動で動かせられないと分かった場合には、咄嗟に判断して手動に切り替えて勝ち、2回戦こそは自動を披露するという「ワークアランド/ターンアラウンド」していたら、または「プランB」が持てるようにしていたら、どうだったであろうか?勝ち進んで何度も白熱の試合ができたのではないだろうか?

 高専ロボコン初期に沼津高専が挑戦して出来なかったことを、四半世紀以上経た一昨年(2014年)第27回大会「出前迅速」に出場した「エール」で、完全自動操縦で課題を完遂し*1、なおかつ試合に勝ってみせた鈴鹿高専には「ことさら」の期待をしてしまうのである。

 今でも印象に残っているロボットが幾つかある。1998年第8回大会「ドリームタワー」に出場の「忍PO!ムササビン(ニンポームササビン)」は忍法真空ドリブルをしてみせていて「ああいう感じのロボットが沢山でてくるといいね」と思わせられたし、高専ロボコンとしては二番煎じ扱いされてしまうかもしれないが*2、2007年20回大会「風林火山 ロボット騎馬戦」に参加の「ズバッと守利拳卍彡(ズバットシュリケン)」、そして2008年第21回大会「ROBO-EVOLUTION 生命大進化」に出場の「鈴舞(スズマイ)」がマスター・スレーブ・システムを実現していて、一応コンテストなんだから「こういうのもありだ」と感心させられたのである。また、2012年第25回大会「ベスト・ペット」に参加したペンギンをモチーフにしたKinnect応用の自動追尾ロボット「Emperor(エンペラー)」によって「同じ勝利でもあのように最新のものを一味違う応用でロボットが勝利するところが見たい」と思わせられたのである。偶然にも、自動追尾などに同じくKinnectを応用した小山高専の「フレンドルフィン」と対戦し、高専ロボコンに次の時代が来たことを象徴的に印象付けられた。


高専ロボコン2012 小山高専「フレンドルフィン」-鈴鹿高専「Emperor」戦

 閑話休題。昔話はここまでにして、利用していたコントローラをみてみる。コントローラーにキーボードと合体可能なタブレットPC端末を利用しているように見えた*3。基本的には本体側のタッチスクリーンだけで状況に応じてロボットに指令を与えるだけなのだろう。スクリーンには競技フィールドが表示されおり、指でポールのあたりを指定するだけでロボットが輪を入れにいくようだった。それにしてもキーボードは何のために用意されていたのか?試合中にデバッグ作業でもする予定でいたのだろうか?*4  

*1:1998年第11回大会「生命上陸」でも一応ほぼ全自動のはありましたが...

*2:1995年第8回大会「ドリームタワー」で大賞受賞の新居浜高専「燧のジョ-ダン(ヒウチノジョーダン)」が最初かな。

*3:キーボードを持っているように見えた選手がいたため。

*4:そんなわけがない。