最近の高専ロボコンに感動したブログ

高専ロボコン第30回大会も近いということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

香川高専高松キャンパスA Beehive(ビーハイヴ)

  PC不調で、ブログ編集環境が整わないため、ブログエントリーだけの投稿としましたが、無事に環境が整いましたので、再開しました。サブノートの代わりにスティックPCを用意しておこうかな*1。そして時間がとれたので内容を充実させました。活躍したチーム・ロボットは試合内容を書くことが多くて大変です(笑)。当初はあまり詳しく書くつもりはなかったんです。

審査員達は名勝負を想像していたのか?

地区大会

 高松キャンパスAチーム「Beehive(ビーハイヴ)」は、2014年に開催された第27回大会の「出前迅速」で、全ての地区大会で比較しても最多の枚数を運んで勝利した試合があったものの、審査員の推薦が受けられなかったので全国進出が叶わず、1年間その残念な思いを次回大会へのエネルギー源にしていたに違いない。そして2015年、第28回大会、「輪花繚乱」四国地区大会、2度も同じ目に遭うところであった。
 大会前日に行われるロボットの調整と実力披露を兼ねたテストランで、Beehiveは地区大会最速Vゴールを披露し調整をしていた最中にモータードライバーを損傷してしまった。煙が上がり、半導体を包んでいるパッケージの樹脂などが焦げていた。折角の調整が無駄になったどころではなく、スペアパーツがなかったのか、そのままでは得点すら出来ない状態に陥ったのである*2。しかも次の日の大会初戦はあの同校詫間キャンパスBチームの「Force(フォース)」である。容赦はないし、負けたくは無かっただろう。翌日、担当者が徹夜で「改良型の」モータードライバーを製作してきたようだった*3。決死の覚悟にも似たものを感じた。
 そして初戦、1回戦第4試合。1回戦なのに、実力伯仲が予想され、試合直前に実況アナウンサーに「事実上の決勝戦」と言わしめた。静かな緊張感が会場に漂っていた中で試合が始まった。自陣ポール3本を高松が9秒で獲得し、詫間のForceに3対2と若干リードし、直ぐに相手陣ポールへ輪を飛ばし始める戦術を開始するが、それを読みきっていたようなForceがBeehiveが飛ばしてきた輪を悉く弾き、高松の出鼻を挫いてみせた。高松もその性能を活かして開始28秒で5対5として頑なに戦術を維持するも、詫間のForceに5対6と逆転される。しかし、高松Beehiveも必死に追いすがり開始35秒で6対6の大接戦となり、試合直前のお囃子、語り口上は、予言となりつつあった。このまま接戦が展開されるかと思われた矢先、高松Beehiveの輪の装填機構がトラブルを起こし始めた。1輪ずつ射出ローラーに送り出すはずが2輪送り出してしまい、容赦のない最強のライバルを前にしてリペアをするためにスタートゾーンへ戻るという悪夢のようなことが前日に続きまた起き始めてしまった。詫間は高松が復帰した1分8秒ぐらいまでに6対8と王手をかけていた。絶体絶命、悪夢が覚めないのである。必死に追いつこうとするも、1分17秒で詫間のForceにVゴールされてしまった。
 初戦で強すぎるチームに当たった運の無さもあるが、なにより最強のライバルに万全の体制で挑めなかったことや、トラブルが無ければ勝てたかもしれないことに、昨年からの思いを重ねたかのような悔しさと全国大会進出の願望を滲ませたコメントを高松キャンパスAチームのメンバーは試合直後に残した。審査員達はその思いを汲み取っただけなのか、それとも全国大会での大活躍を予想・想像したのかはわからないが、1枠しかない全国大会推薦を彼らに与えた。

全国大会

 さて、ちょっと、一息つきます*4。この高松のBeehive、シンプル&シンメトリーなので私の好きな機体の一つです。私が好きな他の機体に勝っているということで、名機・名チーム以上の、何かが宿ったような、地区大会から全国大会まで通して非常にドラマチックで、記憶に残る機体の一つです。
 このロボットは、今大会の地区・全国の対戦経歴のネットワークでは中心にありました。香川高専詫間キャンパスのForce、熊本高専八代キャンパスの挑戦車、北九州高専のWanna Be、産業技術高専荒川キャンパスの荒鯊、そして奈良高専の大和と、全国優勝経験のある強豪チームが自信を持って開発してきた多くの名機達と対戦してきた唯一のロボットなのです。しかもタイプの異なるロボットとも対戦していて、ベンチマーク的な意味合いも非常に強いと思います*5。これまで、全国でベスト4以上の成績も主要賞の受賞経験もなく、地区大会では詫間キャンパスに次ぐ存在であった高松の皆さんは今回の活躍はまさに面目躍如でありましたし、これからは強豪チームとして目されることでしょう。
 ところで、地区大会初戦で負けて、全国大会でベスト4以上の活躍をしたロボットはどのくらいあるんでしょう?決勝まで進出したのは高松のBeehiveが初でしょうか?
1回戦第8試合 熊本高専八代キャンパス「挑戦車(チョウセンシャ)」[1回目]

 事実上の決勝戦とは言われませんでしたが、全国大会でも1回戦から「屈指の好カード・優勝候補同士の対決」と試合前にアナウンスされ、白熱の試合展開が期待・予想されました。

 試合は終始高松がリードしていきます。開始19秒で両者自陣ポールに入れ、3対3。その後は高松のBeehiveが得点してリードをすれば八代の挑戦車が追いつくという感じで、両者は得点を重ねていき開始52秒で両者Vゴールまであと1本の8対8の同点になるも、直ぐに高松BeehiveがVゴールを決めて勝利。

 速攻型も大量得点型も良いけれど、狙撃型・榴弾砲型同士の実力伯仲試合は、一つのミスで負けそうな感じでしたのでシビレマシタ。ローラーで1輪ずつ射出するのは同じでしたが、コンピューター対人間という照準能力対決でありました*6

2回戦第6試合 北九州高専「Wanna Be(ワナビー)」

 奇しくも、縦に輪を挟む2ローラータイプで、しかも射出角度を変えられて、相手ゾーンに近づかなくてもその場で射出方向を変えるだけで相手陣にあるポールに輪を入れられる能力を持つロボット同士の対決となった。勿論、細部の違いはある。ローターの駆動に用いているモーターの個数が1個か2個かの違いで、北九州高専のWanna Beは1ローターに1モーターを、高松キャンパスのBeehiveは2ローターに1モーターを割り当てている。

 序盤の自陣ポールへの得点では、移動に手間取ったWanna Beを尻目に3対0とリードするが、直ぐに追いつかれ、開始31秒で3対4と逆転された。その後Wanna Beにリードされながら得点を重ねていくが、49秒で6対6の同点に追いつけた。

 お互い相手のポールに入れなければ勝てない状況になり、北九州は残り2分と少々を回転する花守と、おそらく八代の「挑戦車(チャレンジャー)」に気付かされたのであろう花守の下の空間を左右から直線的軌道で狙い撃ちされるのを防ぐ暗黒色のまるでダース・ベイダーが纏っているマントのようなもので守りきれると思っていたのかもしれない。

 その状況が始まってから25秒の瞬く間に、高松は先ずフェイントをかけ、北九州側から見て右の自陣ポールを奪い、続いて最も効率よくポールを守れると北九州が想定していたであろう相手陣ポールの中央前に誘導し、空いた相手陣ポールの左をゲット、そして最終的に必殺技の大きな重たい輪の高弾道弾をWanna Beの花守を目掛けてうちこんだ。Beehiveが放った輪は花守の輪の花弁を押し退け、ポールにかかった。難攻不落と思われていたWanna Beの防御を破ってのVゴールだった。これには脱帽した。勝算はあったのだろうか?物理学的に計算したのだろうか?それとも賭けに出たのか?知りたいところである。

準々決勝第3試合 産業技術高専荒川キャンパス「荒鯊(アラハゼ)」

 Beehiveとは全く戦術が異なり、しかも全地区大会中で最速の12秒でVゴールを決める能力がある都立産業技術高専荒川キャンパスの荒鯊(アラハゼ)が対戦相手であった。これまで対戦相手とは違い、自陣ポールに入れ終わる頃に負けているかもしれないのであった。全国大会に出場して既に名機2台に競り勝っていた。ここで負けても彼らが失うものなんか無かったのである。また、荒鯊のこれまでの試合は10秒台で勝つどころか2分台のVゴールVゴールが出来なかった試合すらあった。高松のメンバーが荒川の荒鯊をはじめとする一斉射出型ロボットの調子の悪さを知っていたかは分からないが、いつもの50秒台でVゴールができれば勝算はあると考えても不思議はなさそうな雰囲気が会場内に醸し出されつつあった。

 試合が始まり、いつものように荒川の荒鯊は一斉射出するが、相手陣ポールには一つも入らず、高松のBeehiveに千載一遇のチャンスが訪れた。荒川の荒鯊の弱点、最初の一斉射出で失敗するとスタートゾーンに戻って人間が輪を装填するが、その時間がかかること。連射が出来るBeehiveは荒川が荒鯊に輪を装填している間にVゴールを決めれば勝てるのだ。

 開始15秒で自陣ポールを全て獲得して6対3と点差を縮め、荒鯊がスタートゾーンへ戻っていって装填に手間取っている隙に中央ポール全てを獲得し、33秒で6対6の同点に追いついた。その間、荒川が輪を1本ずつ装填と射出を繰り返そうとしていた。まだ勝負はついていないのに諦めたと受け取られかねない消極的な戦術であった。その隙に高松Beehiveは荒鯊が立ちはだかることなない相手陣ポールに次々と輪を入れ逆転、そしてVゴール。同点から20秒も掛からず、開始52秒でチャンスを掴んだ。そして初めてのベスト4進出が決まった。

準決勝第2試合 熊本高専八代キャンパス「挑戦車(チャレンジャー)」[2回目]

 地区大会でも全国大会でも、再試合以外で、同じ相手と二度も試合をすることは初めてではないか?全国大会で予選が行われた第21回大会「ROBO-EVOLUTION 生命大進化」や第22回大会「DANCIN' COUPLE」、敗者復活ワイルドカードが採用された第25回大会「ベスト・ペット」や第26回大会「Shall We Jump?」ではこういう対戦はなかったのか?直ぐには思い出せないほどの珍事になることを審査員達は知らずに選択した。

 1回目の対戦同様に序盤から物凄い勢いと正確さでお互いポールに輪を入れていき、どちらかがミスをして輪が入らなければすればもう一方も同じミスをして輪が入らず、まるで平衡状態を保つかのように展開が最後までもつれていくかと思われたが、八代の挑戦車が常に1、2点のリードを保つようになる。

 高松のBeehiveは防御装置があることを最大限に活かすため、自陣ポールを全て獲得した後に自陣ポール中央の前に居座って試合を続ける戦術を選択した。まるで対戦した北九州のWanna Beのような戦術である。一方の八代は防御装置がないスナイパーであるため、最も適切と考えたようなスタートゾーン寄りの位置から動かずに低弾道の輪を放ち続けた。防御の差はあれどお互い似た戦術で再対戦していることに意地の張り合いみたいなものを感じた。

 先にVゴールに迫ったのは八代の挑戦車であったが、ここで高松の作戦が功を奏して挑戦車が放った低弾道の輪を悉く跳ね返し、ポールに入れさせない。高松はそれを見て取り、また輪の数に余裕があることからBeehiveの比較的高い連射能力で次々と輪を放ち相手陣ポールを取って2点差を縮めて同点の8対8とした。ここまで43秒と1回目52秒より速い。最後のポールは輪が打ち落とされることを警戒してか、得意の高弾道で輪を次々と放ち始め、八代の輪を防ぎながらとうとう開始58秒でVゴールを決め、八代の挑戦車を返り討ちにした。

 真ん中に陣取りながらの戦術は元々考えていたのだろうか?

決勝戦 奈良高専「大和(ヤマト)」 

  香川高専高松キャンパスが初めて駆け上った全国大会決勝戦。そこに登りつめるだけで十分名誉なことだろう。

 試合内容は、奈良の大和の独壇場であった。開始19秒で7対0とリードされた。奈良の大和はVゴールまでポールを二つ残していたが、二本掛け・三本掛けが可能な大和にとってはVゴール可能と同じことである。

 28秒で高松が7対4と追い縋ってみるも、直ぐに大和の必殺三本掛けの大技であるサンバーストを29秒で決められ、Vゴール負けした。30秒も掛からずに高松の決勝戦は儚く終わった。しかし、悪夢は消え去っていた。 

香川高専高松キャンパスA Beehive(ビーハイヴ) 画像URL

NHK高専ロボコン ライブストリーミング サイト 四国地区大会 出場校データチェック ページより

上記サイトの都合で画像が閲覧できないことがあります。

特徴

  • 移動システム:四輪オムニホイール
  • 射出エネルギー源と格納方法1:2次電池(+輪の送り出し用圧縮空気(ペットボトル))
  • 射出装置1:2軸1モーターの挟み型ローラー(縦挟み)
  • 照準/測位システム:なし(目視)
  • 通信システム:未確認
  • コントローラー:ゲームパッド+通信デバイス拡張
  • 操縦者:1名
  • 自律機能/自動機能:未確認
  • 妨害装置:あり

意外と速い足回り

 メカナムホイールを採用しているロボットの中では最速ではないだろうか?ギア比を低くして、速度を高めにし、モーターに流す電流を多めにしているのだろうか?モータードライバーが損傷したのは、そうした設計が原因の一つであったのだろうか?

輪倉

 銃器の弾倉(マガジン)のように一度に素早く大量の輪の装填が可能となっている。輪がなくなったらマガジンごと交換すればよい。同様の機構を備えたチームはあったが、高松の場合は全ての輪を積んでいたので、交換に重点を置いてはいないようだ。恐らく、例え勝算が低い相手であっても、相手がミスをしてスタートゾーンに退くことなどがあれば直ぐに反撃に出られるように、つまり何時でも輪を放てるように、試合時間とタイミングを有効に活用しようという目論見がみてとれる。

制御装置

 出場校データチェックのページにはPID制御*7で所定の回転数と角度にしていると記されている。その通りなら、ローラーの回転速度だけでなく、仰角を調節しているモーターの回転速度も制御していることになる。どう考えてもローラーの回転速度と仰角、または仰角調整用のモーターの回転速度などは互いに影響を与えることがない非干渉系であるとしてよいので、それぞれ独立した制御系が存在していると推測する。

ローラー

  黒い遮蔽物で覆われているので機械的な機構が全くわからないが、1つのモーターで下方のローラーを回し、その下方のローラーともう一つの上方のローラーをベルトかチェーン、または歯車を介して動力を伝え、完全に同期するように作られていると推測する。

 バックラッシュに起因するトルク変動を抑えるための機構をつけたくなければ自ずとチェーンかベルトを採用しているはずである。どちらでもなければ、自動車やバイクのエンジンのカムシャフトを精密に回すために用いられているシザーズ・ギアを使っているのかもしれない*8。あの輪がポールに次々と入っていく精度にはこうした秘密の工夫がされていると睨んでいる。

 もし、二つのローラーのずれを機械的に押さえこまなくても、ローターの回転速度を所定の回転数に保つようにPID制御を行っているのであれば、かなりの熟達者が居るに違いない。何故なら、最適な制御パラメーターを代数的に求めることが出来ず、数値合わせ的な調整が必要だからだ。条件が変わればそのためのパラメーター・チューニングは必須である。PID制御は古典制御と呼ばれて久しいが、現役の制御方法の一つであるから何度も学びなおしても損はないので、後日取り扱うことにしよう。

 ところで、微分要素をどうやって拾ってるんだろう?プログラム的にサイクル違いの差分をとっているだけだろうか?久々に元京都大学教授(元松江高専学校長)の荒木光彦先生の著書でも読もうか*9

ディジタル制御理論入門 (システム制御情報ライブラリー)

ディジタル制御理論入門 (システム制御情報ライブラリー)

 
仰角調整

 輪の射出時の角度を調整するにもPID制御が使われているというが、ロボット本体からの相対的な角度を精度よく素早く調節可能なのだろうか?ローラーの速度制御に対して、この角度(仰角)の場合は位置制御だろう。クローズアップされていないので、これ以上は分からないが、ご存知の方がいらしたら教えてください。

照準システム

 非常に不思議なのだが、Kinnectを使った精密狙撃の八代の挑戦車と同等かそれ以上の精度で輪を入れていたが、どうやって照準をあわせているのか?それとも輪が大きいのである程度感覚を掴んだら入るのか?特に北九州高専のWanna Beとの試合でのフェイントが驚きであったのが、あんなに速く狙いを定められるのは何故なのか?仰角の調整がPID制御によって素早くできることもあるだろうが、方向はどうやって定めているのか?

*1:このブログに関係ないけど、サブノートも64bit化しておきたいんだよね。

*2:全部のモータードライバーが壊れたのか、それとも駆動系だけなのか、射出系だけなのか、わかりません。

*3:私も地区大会の宿泊先で夜なべして半田ゴテをもって回路を作ったことがあります。

*4:堅苦しい文体は一先ず休憩。

*5:後できちんと検証して図でも描いてみるべきかな。

*6:高松のBeehiveには八代並みの照準システムはありませんよね?

*7:PID制御もご存知でない方はとりあえずご自分でお調べになってください。後日とりあつかってみるつもりです。

*8:シザーズ・ギアの説明があるサイトへのリンクでも張りたかったんですが、時間がないので後日。

*9:因みに荒木光彦先生とは何十年か前になんらかの機会で一度お会いしたことがあります。