高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

苫小牧高専A XYlert(キシラート)

試合内容

地区大会

初戦1回戦第3試合

 旭川高専Bチームの「ーUmbrellaー(アンブレラ)」と対戦。終始自陣ポールに苦戦していた旭川高専のUmbrellaを尻目に、自陣ポール、相手陣ポール、中央ポールと得点していった苫小牧高専のXylert。特に中央ポール・相手陣ポールへは2本しか搭載できないにもかかわらず、確実に輪をポールに入れ、短時間に2点を加点できた。試合は7対1で大差で圧勝。

準決勝第2試合

 前日のテストランで唯一Vゴールを他のチームに見せつけていた函館高専Bチームの「ブラックフープシューター」と対戦。国技館を目指す苫小牧の主力チームは前評判を高めたブラックフープシューターに負けるわけにはいかず、また地元開催であったが既にBチームが敗れていたため、XYlertのメンバー達は是が非でも勝ちたいと思っていたに違いない。両チームの1回戦での得点をみれば、XYlertが1点上回っており、勝てない相手ではない。

 両者最初の自陣ポールへの輪を外すが、苫小牧は、輪の装填にスタートゾーンに戻ったこともあって時間がかかったが、1分12秒で自陣ポール3本を決め、3対1とリードし、そして直ぐに相手陣右、さらに中央ポール2.5m右にも輪をいれ、5対1(1分29秒)と試合前半で大きくリードを築いた。

 前日や1回戦での好調具合が嘘のように自陣ポールになかなか輪を入れられない函館を警戒しつつも苫小牧は、搭載している長距離用の輪を、中央ポール2.5m左(2分5秒)、相手陣左(2分14秒)と自在に入れて7対2とさらにリードを広げ、試合終盤2分46秒には8本目となる中央ポール3mにも輪を入れ、Vゴールにあと1本という状況を作った。前日Vゴールをしていた対戦相手にVゴールで迫ったのであった。

 結局、苫小牧はVゴールはできなかったが、8対3で勝利し、先に決勝戦進出が決まっていた旭川高専Aチーム「Orthrows(オルトロス)」のメンバー達にXYlertの勢いを見せ付けたかのようであった。

決勝戦

 重量制限のために二つある装填装置の一つを取り外し、得点能力をほぼ半減させていた旭川高専Aチームの「Orthrows(オルトロス)」と対戦。決勝前までの得点を合計すると1.5倍、5点差もあり、勢いに乗っていた苫小牧のXYLertは優勝が目前にあるのを実感していたのかもしれない。

 開始早々、旭川のOrthrowsが苫小牧の射出を乱そうと走行や位置調整の邪魔になるように苫小牧のスローゾーンに輪を放ってきたが、苫小牧は苦にもせず、開始31秒で1本も外すことなく自陣ポール3本に輪を入れ、0対3とリードを築いた。2回戦までの勢いがあるなら、ここで勝負がついたはずであった。

 自陣ポール3本に入れた後、直ぐに苫小牧は相手陣ポールなどを狙うが全く入らず、いつもの通りに2本輪を投げては輪の装填にスタートゾーンへ戻るのを繰り返していく他なかった。1回目の装填を終えてスローゾーンへ戻ってみると、旭川が自陣ポール3本に輪をいれていて、3対3の同点になっていた。苫小牧はここで得点することが出来ればよかったが全く入らない。2回目の装填を終えてスローゾーンへ戻ってみると、5対3と逆転されており、試合時間は残り1分ほどであった。ここで同点に追いつけなければ決定的になってしまうのを避けたかったのだが、またも苫小牧の輪は入らなかった。

 その後、両者ともに得点できず、5対3のまま試合は終了。苫小牧は決勝戦で本来の実力がだせずに負けてしまった。

全国大会

 函館高専のブラックフープシューターや釧路高専のスロペクスも良かったが、北海道地区大会で得点の合計が最高点であったことと、試合でもっともVゴールに迫ったこと、そして装填装置は無いながらもオーバースロー型で輪を正確にポールに掛けていくのが評価されたのか、苫小牧のXYlertは全国大会に推薦された。

 地区大会では中央ポール・相手陣ポール用の射出装置は2つであったが、全国仕様は3つに増やされた。

1回戦第3試合

 全国でも唯一の相手陣ポールへの射出までも完全に自動で行う福島高専の「ぐる輪(グルリン)」と対戦した。奇遇にも、福島のぐる輪も苫小牧のXYlertも、輪の装填装置がなく、低い機体であるため、そのような機体はスタートゾーンとスローゾーンを何度も往復しなければならず、相手の輪を防ぐことはできず輪を放ち続けるしかない。そんな両者が対決するのであるから、ガードを全くしないボクシングの打ち合いのような試合展開になったのは自然なことである。

 序盤、福島が地区大会のように自動的に自陣ポールのみならず中央ポールまで得点していくのを失敗し、開始8秒で2点を取ったとったところでスタートゾーンへ戻っていった。苫小牧も1点取ったところで、スタートゾーンへ。

 48秒、先にスローゾーンへ戻っていた福島が自陣ポール3本目を決めて3対1、さらに相手陣左にも輪を入れて4対1(58秒)と苫小牧はリードを築かれてしまった。スローゾーンへ戻っていた苫小牧はその直後に自陣ポール2本目を入れて4対2として、またスローゾーンへ。

 1分28秒、苫小牧は試合半ばに自陣ポール3本目に輪を入れ、さらに1分41秒に中央3mに輪を入れて、4対4の同点に追いついた。ここから苫小牧の反撃というときに、福島が中央ポール2.5m右に輪をいれ、5対4とされ(1分44秒)、またも苫小牧はリードされてしまう。その後、両者、スタートゾーンに戻っていたが、先に出た苫小牧が中央2.5m左に輪をいれて再び同点に追いついた(2分16秒)。しかし、再度同点の直後に福島が中央2.5m左に輪をいれて6対5の1点リードを保った。

 終盤、試合時間残り30秒弱、福島が1点リードを保ったまま、スタートゾーンに戻って輪の装填に時間がかかっていた。苫小牧もスタートゾーンに戻っていたが、装填の早さで先にスローゾーンに出た。相手陣ポールを狙って輪を放つが入らない。再度装填を終えて放ったが相手陣ポールには輪は入らず、試合終了。6対5で苫小牧は負け、大会を終えた。相手陣ポールではなく中央ポールを狙っていたら同点で試合を終えたのかもしれない。

苫小牧高専A XYlert(キシラート) 画像URL

北海道地区大会 出場校データチェック ページより

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特徴

  • 移動システム:四輪オムニホイール
  • 射出エネルギー源と格納方法1:ゴム
  • 射出装置1:ゴム引張弾性利用カタパルト(アンダースロー型)(自陣)x3
  • 射出装置2:ゴム引張弾性利用カタパルト(オーバースロー型)(中央・相手)x2(全国3)
  • 照準/測位システム:なし(目視)
  • 通信システム:未確認
  • コントローラー:ロボット専用コントローラー(Probo
  • 操縦者:1名
  • 自律機能/自動機能:未確認
  • 妨害装置:なし

射出装置

 自陣ポール専用射出装置にアンダースロー型、中央ポール・相手陣ポール用の射出装置はオーバースロー型を採用している。さらに、圧縮空気とエアシリンダーに頼らず手動でエネルギーを蓄えさせたゴムの弾性力を輪を飛ばすエネルギー源にしている。最終的に全国大会では中央ポール・相手陣ポール用の射出装置は3つ搭載したが、この組み合わせと搭載数は全国でもこの機体だけではないだろうか。

 全ての射出装置の輪を引っ掛けておく爪の部分は、輪離れや輪のピッチング(回転)が最適になるように工夫された形状をしている。

 防御と自動装填機能を持たず、射出の正確性の向上のみを狙った割り切った設計であったのか、機体高が低く、おそらく重心も低いに違いない。スタートゾーンでの輪の装填の往復作業が必ず入る戦術を取らざるをえないのに、地区大会ではあと1本でVゴールに迫れたのは、射出装置の爪の工夫だけではなく、移動のし易さと射出の衝撃の影響を最小限に留めた低重心で頑丈な機体のおかげでもあると推測している。