高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

高専ロボコン・データベース 第3回大会試合情報 仕様とデータ その1

 高専ロボコン2018地区大会が迫ってきました。噂では、昨年の大会で優勝候補に匹敵する能力をもちながらも発揮できなかったところがかなり仕上がっているとかいないとか。新しい高度な高専ロボコンとなる今回の大会が楽しみですね。

第3回大会の予選

 さて、第3回大会の仕様*1について記していきます。この記事までに時間がかかったのは、少しの調査と、あるものの収集を進めていたからです。第2回までと違って、あるエピソードの事実と映像をよく吟味した結果に辿り着いた疑問とその解決から始めます。

殆ど誰もが詳細に思い出せない予選

 第3回大会ニュートロンスターは、全国の高専が初めて一堂に会したロボット・コンテストであり、予選も初めて行われました。その予選は一対一の対戦形式で、シングルエリミネーションの決勝に続く位置づけであり、基本的には勝利したチームが決勝進出しました。しかし一つ例外があり、勝敗に依らない決勝進出となった米子と旧八代との予選がありました。Wikipedia にその例外が記されていますが、熊本電波とあるのは八代の間違いです。私も例がこの予選だけだと思っていました。

高専ロボコンの変遷 - Wikipedia

 Wikipedia には出展が示されていなかったのでひょっとすると勝敗によらない選出は間違いの可能性があるとも思っていたのですが、米子高専のサイトにそれを裏付けるページがありました。

第3回ロボコン

しかし、そのページに私が思っていた根底を覆す記述が書いてあります。

審査員によって選ばれたチームが決勝トーナメントに参加できる方式

勝敗は関係なかったようです。

映像でわかること

 第3回大会の映像が手許にあるので冒頭で何秒か映しだされるトーナメント表の下に予選対戦表があることが確認できます。この予選対戦表やを吟味していくといつかのことがわかります。*2

  • 東日本ブロックと西日本ブロックに分かれていた
  • 赤い丸が付けられているチームが決勝トーナメントに進出
  • 赤い丸ではなく、赤い何の上に白い札が付けられているチームが決勝トーナメントに進出
  • 何もつけられていない対戦はどちらも決勝進出していない

 赤い丸、そして赤い何かとその上の白いものは一体何を表すのでしょうか?
 

当時の参加者に尋ねてみた

 手許の映像と公開されている資料を漁っても何もわからなかったので当時参加されいた方に尋ねてみました。

航空高専 深谷直樹さん

 深谷直樹さんは東京都立産業技術高等専門学校で学生への教鞭をとりながらロボットや福祉機器の研究・開発をしていらっしゃる研究者です。また学生・高専ロボコンの審判・技術専門員・安全対策アドバイザーをしていらっしゃいます。最近ではNHK連続テレビ小説『半分、青い』に登場したピアノを演奏するロボットの製作を担当されています。その深谷さんが航空高専(現産技荒川キャンパス)在学当時に航空高専チームの選手として第3回大会に出場されており、予選には勝利して決勝に進んでいました。そこで当時の決勝選出方法について尋ねてみました。

 深谷さんによると、他チームのことまでは鮮明に記憶しておらず、昔のことなのでうろ覚えになっているというとのことでしたが、幾つか覚えていたこと、可能性の高いことを教えて頂きました。

  • 第3回大会の映像で確認できる予選表の赤い丸のようなものは「バラ」
  • その「バラ」は通常の状態で勝利した側に付けられたのではないか?
  • ひょっとしたら計量不合格だが予選だけは出場させて貰ったチームがいるかもしれない

 画像の赤い丸が「バラ」だったことがわかりました。そして深谷さんがいた航空高専チームは予選で勝利し、なおかつバラがつけられていたことがわかりました。但し、米子と八代の件があるのでバラが勝利を示すものではなく、予選中に選出したとするのが妥当でしょう。

仙台電波高専 伊藤健治さん

 伊藤健司さんは第3回大会で優勝した仙台電波高専(現仙台高専広瀬キャンパス)テト坊の操縦者だった方です。私が高専ロボコンの情報集めに関わり始めた頃、豊橋技術科学大学ロボコン同好会(現TUT Robocon Club)の掲示板でテト坊のチームの方が情報提供されていました。その方は見つけられなかったのですが、偶然某SNS上で伊藤さんを見かけていたので、予選について尋ねてみました。

 伊藤さんよると、深谷さんと同じく予選のバラや選出方法については殆ど覚えていないとのこと。また米子と八代の負けた方が選出された対戦があったことも知らなかったとのこと。ただ、決勝選出には、先述した東西に分けたときの比率や、各地方の高専がなるべく偏りなく決勝に進出させる配慮されていたとしてもおかしくないようだったので、一部の学生がから「地区予選をやるべき」と不満がでていたそうです。

ミスターXに尋ねる

 全く埒が明かないので、頼りにしているミスターXに尋ねてみることにしました。そうすると、当時の台本を何故か持っているということで、予選のルールなどを教えて頂きました。

  • 0対0の場合、両者失格(決勝では延長戦に突入?)
  • (得点があり)同点の場合は30秒の延長戦に突入し、それでも決着がつかない時はジャンケンで勝ったほうが決勝進出
  • 予選終了直後に失格・敗れたチームの中から決勝進出チームを選出することをアナウンスすることになっていた

最後のアナウンスは、62チームから32チームに絞るので、最低でも1チームは負けたチームから選ばなくてはなりませんし、両者失格がある場合はその選出数が増えます。

妥当な推測と結論

 これまでの情報で映像を見返してみると、幾つか推測可能なものがあることに気が付きました。先ずは予選の対戦表を書き起こしておきます。

1 東京都立 vs 沼津 どちらも進出なし
2 ●都立航空 vs 木更津
3 A一関 vs 桐蔭 一関は決勝T1回戦延長の末0-0をじゃんけん勝ち
4 ●育英 vs 群馬
5 A長野 vs 福島 長野は決勝T1回戦ゼロ点で負け
6 ●長岡 vs 釧路
7 A岐阜 vs 小山 岐阜は決勝T1回戦ゼロ点で負け
8 ●富山商船 vs 金沢
9 ●茨城 vs 鶴岡
10 八戸 vs ●宮城
11 A苫小牧 vs 秋田 苫小牧は決勝T1回戦ゼロ点で延長の末0-0でじゃんけんで勝利
12 函館 vs 石川 どちらも進出なし
13 旭川 vs ●仙台電波
14 A東京 vs 富山 東京は決勝T1回戦ゼロ点で負け
15 ●福井 vs A豊田 どちらも進出!豊田は決勝T1回戦で2得点だったが接地の反則負け
16 ●大分 vs 高知
17 熊野 vs A大島商船 大島商船は決勝T1回戦ゼロ点で負け
18 ●熊本電波 vs 米子
19 ●徳山 vs 大阪府
20 vs ●久留米
21 佐世保 vs ●八代
22 ●高松 vs 奈良
23 明石 vs 鹿児島 どちらも進出なし
24 A阿南 vs 弓削商船 阿南は決勝T1回戦ゼロ点で負け
25 A鳥羽商船 vs ●和歌山 どちらも進出!鳥羽商船は決勝T1回戦で2得点で勝利
26 A松江 vs 広島商 どちらも進出!松江は決勝T1回戦ゼロ点接地負け
27 詫間電波 vs 有明
28 鈴鹿 vs 都城 どちらも進出!鈴鹿は決勝T1回戦で得点したが、延長戦の末負けた
29 北九州 vs 新居浜
30 ●神戸市立 vs 舞鶴
31 宇部 vs 津山

凡例
● :赤いバラ
A:赤い何かの上に白い札

 
 赤い何かの上に白い札のチームの決勝戦での成績をみると、少数のチームは勝ち進んで活躍しましたが、殆どがゼロ点で負けています。そうしたゼロ点で負けたロボットの決勝での動きをみていると、得点が難しいものが多かったので、赤い何かの上に白い札が一方のチームにだけ付けられた予選対戦は、両者失格などのルールが適用されたが、予選後に選出されたのではないかと推測します。一方、赤いバラが付けられた選出されたチームがあるにも関わらず赤い何かの上に白い札もつけられている予選対戦は、米子と八代を除き、両者失格ではなかった試合で、惜しくも負けたので予選後に選出されたのだと推測します。

 いずれにせよ、勝敗がわからず、また選出理由も不選出理由(本当に両者ゼロ点だったのか、両者計量不合格だった可能性はないのか?など)も確定できないので、現時点では勝敗を記録しなくてよいとします。また、将来通算勝利数などを計算したいときには、予選を含めず、決勝トーナメントだけを計数範囲にすることにしたほうがよいと思います。

 さて、今年の地区大会予選はどうなるでしょうか?

謝辞

 ご回答してくださった、深谷さん、伊藤さん、ミスターXさん、ありがとうございました。

つづく

 

*1:決定ではなくドラフトまたはとりあえずの文書化程度ということです

*2:敢えて映像は載せません。