高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

群馬高専B 上州カウボーイ(ジョウシュウカウボーイ)

試合内容

地区大会

 初戦は2回戦第8試合。優勝候補にして直前の試合で最速Vゴールを叩き出していた都立産業技術高専荒川キャンパスAチームの「荒鯊(アラハゼ)」と対戦した。対戦する前に「試合」の行方が十中八九あたってしまいそうではあるが、観衆を魅了する「勝負」においては明らかに上州カウボーイに分があった。

 試合序盤、荒川が自陣ポールに2本しか入れられず、輪の装填のために長い時間スタートゾーンに戻らざるを得なくなり、最速Vゴールを「魅せられない」となったところで、ストリーミング放送や地区大会番組では群馬の上州カウボーイに焦点が移っていった。上州カウボーイはここが「勝負」どころとばかりに、まずは同点2対2(57秒)とし、自陣ポール3本目を先に決めて3対2と逆転してみせた(1分47秒)。しかし、この後、荒川にVゴールを決められ(1分54秒)、試合には負けてしまった。だが、勝負は終わっていない。

 中央ポール3mに狙いを定めると、これまで自陣ポールに輪を投げていた左腕から見右腕に輪を渡し、右腕を回転させ始めた。これだけでも人間臭いのだが、さらに上半身を反らせて、輪を放ち、見事中央ポール3mに輪を入れてみせた。他のポールには入らず、結果は9対4であったが、見ている方々の記憶の中に上州カウボーイは確りと入ったことだろう。

 因みに、ライブストリーミングで上州カウボーイへのクローズアップ時間を合計してみたところ、180秒の試合時間のうち129秒もされており、三分の二は上州カウボーイを映していたことになる。「試合」には負けたが魅せる「勝負」には勝っていたと言い張れるかもしれない。*1

全国大会

 1回戦第2試合、優勝候補の一角で、速攻型でかつ大量得点型の戦術を得意とする奈良高専の「大和(大和)」と対戦した。既視感を覚えても不思議はない試合であった。

 序盤の自陣ポールのうち1本を奈良の大和が外して直ぐに輪の装填をしにスタートゾーンへ戻るところから、群馬の上州カウボーイが同点、逆転して2対3(39秒)とするところまで、関東甲信越地区大会で荒川の荒鯊との試合展開とよく似ていた。違うのは掛かった時間ぐらいである。

 39秒で群馬が自陣ポール3本に先に輪を入れてリードしたことは、奈良を慌てさせていた。奈良が初戦でテストランでVゴールを決めていたというが、そのときのような調子の良さが出ていなかったことは自陣ポールを外した時点で分かる。必殺技の超大きな輪でポールを囲ってしまうサンバーストで態々自陣ポール3本目を決めたことからも想像以上に焦っていたように感じられた。奈良のメンバーも最も焦燥感があったのは群馬の上州カウボーイとの対戦であったと、大会後に出演したロボコニストラジオで語っていた。

youtu.be

 調整作業が完全ではなかった超速ロボットを焦らせた上州カウボーイではあったが、奈良が4対3、7対3とリードしたまま、試合終了。だが、この時点で、ストリーミング映像では、試合時間180秒中、群馬高専のメンバーまたは上州カウボーイだけがクローズアップされたのが役94秒と、試合には負けたが魅せる勝負では勝ったと言ってもよいだろう。

群馬高専B 上州カウボーイ(ジョウシュウカウボーイ) 画像URL

関東甲信越地区大会 出場校データチェック ページより

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特徴

  • 移動システム:四輪メカナムホイール
  • 射出エネルギー源と格納方法1:二次電池
  • 射出装置1:回転棒先端引っ掛け型(汎用)x1
  • 照準/測位システム:なし(目視)
  • 通信システム:未確認
  • コントローラー:自作
  • 操縦者:1名
  • 自律機能/自動機能:未確認
  • 妨害装置:なし

駆動装置

 駆動装置に四輪メカナムホイールを採用している。左腕による自陣ポールへの輪の射出の際には目立たなかったが 、右腕を回転させる輪の射出時は機体全体が、射出方向を前とすると、前後または左右方向に揺れていた。これは、回路的なブレーキでロックしていてもギアなどのバックラッシュのせいで防げなかった現象であるのか、そもそもメカナムホイールの特性上どうしても生じることなのか知りたいところである。この揺れを止めたらより多く輪を入れられただろうか?*2

射出装置

 この競技には必要にして十分な関節を持つロボットアームを二本も搭載し、且つ両腕どちらも射出に使ったという構成をしている。左腕は1m前後飛ばせればよい自陣ポール用で右腕に輪を渡す装填装置でもあり、右腕は中央ポールや相手陣ポール用などの長距離射出用である。射出速度や仰角を大幅に変える機能を一本の腕に詰め込む設計にしないで分離したことは装置の複雑さを上げずに済むから採用したのであろう。全国大会のテストランでは8本のポールに輪を入れていたということから、中央ポールだけでなく相手陣ポールへも輪をいれる能力を有していて、おそらく状態を反らせる角度と射出位置の調整だけで打ち分けているのではないだろうか?*3

デザイン

 外観は、上半身は人型、下半身は車輪つきの四脚である。ロボット好きならどこかでみたことがあっても不思議ではない構造/デザインである。一つはアニメーション『新世紀エヴァンゲリオン』の仮設5号機、もう一つは水道橋重工業が製作したクラタスである。まだあるかもしれない。

 続々と開発されていく新しい仮想のまたは現実のロボットについて意匠権に問題は無かったのかロボット全般や工業デザインに関心がある方々などに気にされることがよくあり、利害関係がある場合に最悪裁判沙汰に発展する。現実のロボットの場合、詳しくは識者に解説をお願いしたいが、おそらくインダストリアルデザインとして区別され、大量生産できるものでなければ意匠権が発生しないのかもしれない。クラタスの場合は極少数の生産であるし、上州カウボーイはワンオフでかつこの世で唯一の作品である。

 歩行の必要も擦れ違う物体への考慮も必要がなく、平坦な「面」を駆けるのであれば、最も自然な形の人型に近いロボットのデザインは上州カウボーイのようなものなのであろう。自然にこのデザインになったのか、何かを参考にしたのか設計者に尋ねてみたいところである。自然にこの形に行き着くのであれば、誰でも利用してよいお墨付きぐらいは欲しいところであるし、高専ロボコンで「上州カウボーイ型」という用語がロボ辞苑に掲載されたい。*4

クラタス スターターキット

クラタス スターターキット

 

*1:放送局のスイッチャーの人の判断次第じゃないかというツッコミは甘んじて受けます(^^; 

*2:詳しい方教えてください。

*3:輪を回す回転数も変更しているのかな?

*4:ロボ辞苑はどこにありますか?