高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

木更津高専A 花鳥風月(カチョウフウゲツ)

試合内容

 初戦は2回戦第3試合から。茨城高専Aチームの「ゴンザレス伊藤(ゴンザレスイトウ)」と対戦した。茨城のゴンザレス伊藤が自陣ポールに輪を一つも入れられずに終始スータトゾーンとスローゾーンを行ったり来たりしていたのに対し、木更津の花鳥風月は同様に行ったり来たりはしていたものの、開始39秒で自陣ポール3本を決め、その後も順調に加点していき、2分35秒でVゴール勝ちまで相手陣ポール1本を残すのみという大量リードの状況を築き、そのまま試合は終了して0対8で勝利した。

 続いて、準々決勝第3試合に臨んで、長野高専Bチームの「infinity(インフィニティ)」と対戦した。木更津は初戦のように順調な試合運びを想定しただろうが、序盤の自陣ポールで躓いた。1分11秒で長野のinfinityに0対9と大量リードを許してしまい、さらに長野に相手陣ポール狙いばかりをされ、Vゴールされてしまうかもしれないという悲観的にならざるを得ない状況であるところを、一縷の望みをかけて再再度自陣ポールに挑戦して1点目が入ったのが1分54秒であった。自陣ポール用の射出機構は本来3本の輪を搭載していたのだが、2本に変更したのが功を奏したようだった。しかし3本目は本来は中央や相手陣ポール用である射出装置で一か八か打ち出してみたが入らず。再度また自陣ポール用の射出装置で得点し、3対9。この時点で2分32秒だったが、木更津は諦めず、中央ポール複数本掛けを狙い大きなを装填し、スタートゾーンを出て放ったが、試合終了間際に中央ポール2.5m右に入り1点を加点するのみであった。試合は4対9で負けてしまった。

 準々決勝は、中央ポールへは前の試合で全て入れられる能力があることが証明できていたこと、自陣ポール向けの輪の装填数を3回目ではなく2回目のときに2本にしていたら、最後の輪は5点追加可能であったので、同点になっていたのかもしれない。テストランでは調子が良かったと耳にしたので、さぞや残念であったろう。

木更津高専A 花鳥風月(カチョウフウゲツ) 画像URL

関東甲信越地区大会 出場校データチェック ページより

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特徴

  • 移動システム:同相二輪操舵二輪駆動+二輪補助輪
  • 射出エネルギー源と格納方法1:金属製エアタンク
  • 射出装置1:エアシリンダ押出カタパルト(パンタグラフ型)(自陣)x1
  • 射出装置2:エアシリンダ押出カタパルト(オーバースロー型)(中央)x2
  • 射出装置3:エアシリンダ押出カタパルト(サイドスロー型)(汎用)x1
  • 照準/測位システム:なし(目視)
  • 通信システム:未確認
  • コントローラー:ゲームパッド
  • 操縦者:1名
  • 自律機能/自動機能:未確認
  • 妨害装置:なし

移動システム

 三輪(または二輪)の駆動輪に一輪(または二輪)の補助輪という構成まではわかるのだが、それ以上のことがわからない。メカナムホイールのようにスムースに移動していることから、同相二輪操舵二輪駆動ではないかと推測している。回転をするときは逆位相になるのだろう。また、駆動装置の配置が長方形底面の対角線上、より具体的には鳥の頭の真下辺りとその対角反対側に、駆動装置が配置されているものと推測している。このような装置とその配置はこの大会で唯一ではないだろうか?

 自陣ポール用射出装置の真下辺りにある補助輪も何か一工夫されているように思える造形をしているが、よくわからない。

ユニーク射出システム取り揃え

 パンタグラフ型、同時に動作させると大きな輪を射出できるオーバースロー型、サイドスロー型と、単独で全国でも少数派の射出機構を採用しているのにそれが組み合わせられているのだから、非常にユニークというか、挑戦的であると言えよう。また、いずれも金属製タンクに詰め込まれた圧縮空気を複同型シリンダーに送って伸張させて装置を動かしており、同じ動力源で三つの異なる射出装置を完成させた点についても非常に意欲的である。

 自陣ポールへは、Z型パンタグラフに似た構造で、自陣ポール射出用にその構造を用いていることだけでもユニークなのだが、輪の装填機構なしに、三つの輪を一つの装置で飛ばしている。輪を最初から三つ持たせておき、一つずつ分離させて飛ばしている。準々決勝では三つでは上手くいかないことに気づいて二つに減らしはしたが、飛ばすごとに輪が減って押し出す重量差が生じるのに、何も調整せずに輪を放っていたのだろうか?仮にそうなら、設計者の設計力に一目置きたい。ただ、成績が伴わなかったので、装填装置は別にしていたほうが良かったのではないかと私は思う。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/01/Toden-8500-Pantograph-00.jpg

"都電8500形が採用していたZ型パンタグラフ"

出典:

ウィキペディアの執筆者. “集電装置”. ウィキペディア日本語版. 2016-03-30. https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E9%9B%86%E9%9B%BB%E8%A3%85%E7%BD%AE&oldid=59160801, (参照 2016-04-12).

 中央ポールへ輪を入れるのにオーバースロー型の射出装置を利用していた。装置は二つあり、それぞれ単独で動かせるようだが、大きな輪を射出するのに同時に同じほぼ同じ角速度で動かせる仕組みらしい。準決勝では中央ポールの複数本掛けをするのに、大きな輪が掛けられ、実際に同時に稼働した。エアシリンダーの伸張をそのまま利用した押出型で、複数の装置を同期して動かすのはあったが(大分高専Aチームの「輪射るどSPEED(ワイルドスピード)」など)、オーバースロー型でそれを実現したのは木更津の花鳥風月だけではないだろうか?

kosen-robocon.hatenablog.jp

 サイドスロー型のカタパルトは鳥が羽ばたくように翼を動かすと輪が射出される。その輪の飛行経路もユニークで、対戦相手はどこを狙っているのか分かりにくいかもしれない。相手陣ポール専用かと私は思っていたのだが、中央ポールや自陣ポールへも利用していた。おそらく緊急時にも利用できるように初速度などを細かく調整可能になっているのではないだろうか。唯一装填装置があり、連射が可能になっているが、試合では上手く活かせなかったようだ。

隠れた名機

 必要にして十分な移動システム、意欲的な射出装置一式、そして外観も作りこんであり、目だった成績は残せなかったが*1潜在的には好試合が出来る能力があったことから、ユニークな組み合わせ機械要素を持っていたロボットとして大事に扱って欲しいロボットである。

*1:他の地区だったら優勝していたでしょうか?