都城高専B 進め!みやこのゾウ(ススメ!ミヤコノゾウ)
1日1機程度紹介していたら、今年のテーマ発表前に全機について書き終えられると思っています。
シンプル・アンド・シンメトリー
Aチームの「うり棒ブラザーズ」もそうだったのですが、なるべく構成要素や部品点数を少なくしてあり、射出方向に対称面を据えたシンメトリーな構造になっています。あらゆる微調整や故障原因追求、修理完了の確認が易しくなるのは勿論、設計段階からある意味「楽」ができるので、*1時間がかなり限られている高専ロボコンにおいてはシンプル・アンド・シンメトリーというのは非常に強力な設計思想でしょう...そんな理屈を並べるより、直感的にセンスの良さを私は感じますし、感じて欲しいです。審査員にも同様に思った方が多かったのか、地区大会でも全国大会でもデザイン賞を受賞しています。*2これは私の勝手な想像というか、妄想ですが、まるでサーカスのゾウが玉乗りしているように、ゾウは円柱の中ではなく円柱の上に配置していたら見ている人達はもっと楽しめたでしょう。
地区大会、全国大会、ともに1勝だけですが、Vゴールを比較的高確率で決められる能力があり、対戦相手は決してミスや油断ができませんでした。全国大会の初戦で、中国地区大会優勝の松江高専にリードされつつも2回も追いついて同点とし、最後は逆転Vゴールで勝ちました。全国大会のストリーミング映像で確認できますが、選手達の入場の時に硬かった表情の顔から、勝利後に笑みが溢れていました。大会後を通してからの感想ですが、接戦・逆転が溢れる試合が続くことを予感させていた試合、象徴的な試合であったと思います。
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NHK高専ロボコン ライブストリーミング サイト 九州沖縄地区大会 出場校データチェック ページより
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特徴
- 移動システム:四輪操舵四輪輪駆動
- 射出エネルギー源と格納方法1:ゴム(+2次電池)
- 射出装置1:ゴム引張弾性利用カタパルト(パチンコ型)(汎用)x1
- 照準/測位システム:
なし(目視)基本目視、補助装置にレーザーポインター、(自陣ポール用?)フェンスとの距離を一定に保つための超音波センサー - 通信システム:
未確認(アンテナ2本)Xbee(ZigBee規格) 2系統(駆動用+射出用) - コントローラー:自作
- 操縦者:1名
- 自律機能/自動機能:
なし?マガジンから輪を取り出してカタパルトに装填するまを自動化(手動も可能) (自陣ポール?)までの一定の距離を保つ?(未確認) - 妨害装置:なし
移動システム
平行移動をするときは同位相で、カメラ撮影でいうパン回転をするときには対角同位相で駆動輪を操舵しています。図心的にも重心的にもシンメトリーのようなのでなので、機体の角からの対角線が交差するあたりを中心軸に回転しています。操作と信号制御はAチームのシステムより若干複雑そうです。操舵状態は何パターンあるんでしょう?逆位相にもできるのかな?
1対の円形に曲げ加工されたアルミ角パイプが輝く
今ではホームセンターなどでも丸や角のパイプを曲げる器具が売られていますが、この機体の輪の装填システムの根幹をなしている円形の角パイプのような太さ、そして大きな直径で綺麗に曲げることができるようなものは販売されていないと思いました。*3また、ホームセンターなどで売られているアルミ材は表面がアルマイト加工されていて曲げ加工などの塑性加工に向いていなかったり、そういった表面加工がなくても、切削や曲げなどの加工によるストレス(熱や応力)で非常に硬くなるところが出てきて考えた通りに仕上がらないこともあると思います。
大会後、twitterでこのチームに所属していると思われた学生に質問したところ、この部品を作るためだけの器具(ベンダー)を自作したとのこと。それ以上のことはわからないんですが、綺麗に仕上がっていると思います。真円度はどうなのか?
@Matthew238 先輩がベンダーを自作して円形に曲げてました
— すが(:3_ヽ)_ (@sugasan621) 2015, 12月 24
撃ち分ける技術
一つの射出機構で自陣、中央、相手のポールに撃ち分ける設計を高く評価したいです。ゾウの仰角が固定なので射出速度、すなわちゴムを引っ張る長さで調整しているようですが、気温変化、疲労による変化、ヒステリシスな特性を踏まえた上で、どういう調整の仕方や設計手法をとっているのか知りたいところです。統計をとっていないので、とれないので正確性を欠きますが、比較的精度よくポールに輪が入っていたチームだと思います。
調整するのに線形性が良いことは重要視されますが、工学的によくあるのが、線形要素をみつける、線形とみなせる要素をみつけることでしょう。後者は「超」基本的なところだと、なるべく線形に近く調整可能したい電力増幅機能を実現するのにトランジスタの特性の線形性の良い所だけを利用するとかありますし、前者だと、有名なところではタグチメソッドなどの品質工学を応用して線形チューニング要素を見つけるといったものがあるでしょう。*4そういうのを使って居たチームなんだろうか?
その他
装填したい輪をマガジンを回してゾウの鼻まで持ってきて、ゾウの鼻で輪をマガジンに固定している風船を針でパチンっと割って射出機構に装填するのがユニークで興味深いものでした。風船を割った音がもっと大きければ面白さが増したのかもしれませんし、発射準備が出来たことを知らせるために「パオーン」と鳴かせても良かったかもしれません。何かストーリーが設定されているのでしょうか?
初めてシリーズ
このチーム、地区大会と全国大会、同じ賞を貰っている。デザイン賞と特別賞 (マブチモーター株式会社)。これは、複数受賞が始まってから初めてのことではないのかな?