高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

長野高専A C-RAZair(シーレーザー)

試合内容

地区大会

 関東甲信越地区大会決勝は、全国大会を含めても最も白熱した試合としたい。また郷土に因んで言えば、その振る舞いはまるで真田一族のようであった*1

初戦 2回戦 第1試合

 2回戦からの登場となった長野高専AチームのC-RAZairは初戦で長岡高専Aチームの「輪翔輪勝(ワッショイワッショイ)」と対戦した。

 開始直後、操作を誤ったのか妨害だったのかわからないが、長岡は長野側に幾つかの輪を投げていた。長野はそんなことは気にせずにどんどんと得点を重ねていった。開始22秒で自陣ポール3本に輪を入れて1対3とリードしていたが、長岡に直ぐに追いつかれて3対3となった(25秒)。

 長野は必勝作戦の一つを実行に移した。大きな輪で中央ポール三本掛けを成功させて3対13と大量リードを開始37秒で築いた。この時までに中央ポール三本掛けを成功させていたのは、大分高専の「Golgoole(グルグール)」だけであり、彼らの三本掛けの成功の中でも最速は久留米高専の「Fortress(フォートレス)」との試合で1対13の大量リードを開始34秒であり、それにほぼ等しい速さであった。そして輪の装填のためにスターとゾーンへ。

 1分過ぎに長野はスローゾーンへ戻ると、中央ポール2.5m右で1点を加えてから、必勝戦法である自陣ポール中に鎮座しながらの中央ポールと相手陣ポールへ連続射出に入った。長野は次々と得点を重ね3対17で、圧勝した。

準々決勝第1試合

 小山高専Bチームの「輪Navi君(ワナビークン)」と対戦した。

 序盤は若干リードされ、長野の自陣(相手陣左)にも先に輪を入れられて1点リードされたが(42秒)、長野は予想済であったのか、慌てず、先の試合と同様に中央ポールに三本掛けを成功させ、13対4と大量リードし、この試合では直ぐに自陣ポール中央の前で守備に入った。

 小山の輪Navi君は地区大会の時点では中央ポールで複数本掛けが出来なかったようであったため、長野のC-RAZairの防衛装置を超えてポールに輪を入れられる性能を持ち合わせていなかったので、長野は何もせずとも勝利できたはずであるが、小山が1点ずつ返すのを見ながら輪を放っていた。小山は中央ポール3本に、長野は相手陣右に輪を入れ試合時間の折り返し時点で14対7となっていた。

 1分47秒過ぎ、小山が長野が守る相手陣ポール中央に輪を放ってきたが長野の防御装置がポールに入るのを阻んだ。

 小山の打開策だったのか、小山が相手陣ポール右を狙いに移動した。長野は移動するまでもなかったはずであるが*2、小山に合わせて移動した。そして2分3秒過ぎ、小山が放ってきた輪を、偶然か狙ったのかは分からないが、長野の輪で空中で打ち落とした。仮に偶然だとしても、地区大会や全国大会のライバル達に何重にも防御線が張られているかのように錯覚させることができ、かつ防御重視の強い印象を持たれたに違いない。

 2分12秒過ぎ、長野は小山が放った輪をまたも防御装置で防ぎ、小山が輪の装填にスタートゾーンへ移動したのに合わせて、長野もスタートゾーンへ。そして2分33秒過ぎ、小山がスローゾーンへ飛び出すと、長野は追随した。中央ポール・相手陣ポール用の射出装置の片方にはまだ何本かの輪があり、試合時間が1分もなく、駆動系が故障した時のリスクを考えれば、長野はスタートゾーンへ戻る必要性は極めて低いはずであったが、次以降の試合の予行演習であったのだろうか。

 長野は試合終了まで何度も小山の輪がポールに入るのを防ぎ、14対7で圧勝した。

 この大会までの防衛重視の全国優勝候補のロボットといえば、対戦した小山のロボット名とよく似た名前の北九州「Wanna be(ワナビー)」が5つの輪を使った防御システムで強く印象づけられていただろうが、長野のC-RAZairはこの試合でその印象を薄めたかもしれないと私は思っている。

準決勝第1試合

 都立産技高専品川キャンパスBチームの「一点突輪゚(イッテントッパ)」と対戦し、品川が一つも輪を入れられなかった一方で、中央ポールの三本掛けと二本掛けを成功させた上に、次々と加点していき、地区大会だけでなく後に開催された全国大会と合わせても大会最高点の22点を叩き出して、0対22で完勝した。

 初戦で大分「Golgoole(グルグール)」と遜色ない素早い得点力を披露していたが、この試合の対戦相手が防御策を講じるまでもなかったとはいえ、Golgooleを上回る得点力を見せ付けたことは、前の試合の防御力ともあいまって、次の試合の対戦相手と他地区の優勝候補に相当に大きなプレッシャーを与えたに違いない。また、一斉に輪を飛ばして短時間でVゴールを狙う戦術に対するアンチテーゼが示され始めた瞬間でもあった。次の試合ははその実証であった。

決勝戦

 都立産業技術高専荒川キャンパスAチームの「荒鯊(アラハゼ)」と対戦した。一瞬でカタがつくか、大量得点で圧勝するか、白熱した試合結果から振り返れば、この時、殆どの観戦者は極端な予想しかなかったに違いない。予想外の試合展開になるとは誰も予想していなかっただろうから。特に両校の応援団は、全地区大会中最高得点を記録したロボット、同じく最速Vゴールのロボットをそれぞれが誇示していたのだから。

 序盤、長野は、荒川のVゴールを阻止するべく、自陣ポール中央に輪をいれながら(11秒で1対0)、その前に留まっていた。荒川が自陣ポール3本を決め、確認しながら慎重にVゴールを狙っているのをみた長野はスロゾーン最寄の自陣ポール右の前へ移動し、荒川の射出に備え直した。おそらく、自陣ポールに輪を入れるのを進められる隙があると判断したのであろう。

 30秒過ぎ、荒川が、相手陣中、左、そして中央3本を決め、輪の装填のためにスターとゾーンへ。長野も守っていた自陣ポールに輪を入れて2対8、そして自陣ポール3本目を入れて逆転を狙いたいところであったが、外してしまい、長野もスターとゾーンへ。おそらく、ここで輪が入っていたら、長野は苦しまなくて済んだのかもしれない。

 55秒過ぎ、両者スローゾーンへ飛び出して、長野はVゴールされてしまう自陣ポール右の前に、荒川はいつもの一斉射出位置につき、両者様子を窺うように見合っていた。このとき長野はこのまま荒川が試合終了時間まで輪を飛ばさない作戦を最も恐れていたかもしれない。そして1分10秒過ぎ、長野は守るべき自陣ポールの前から自陣ポール3本目を入れにいこうとしたか、または荒川に輪を撃たせるためにフェイント移動をしてみせた。*3それをみた荒川が輪を放ったが、長野は荒川の動きを直ぐに感じて守るべきポールの前に戻り、荒川の輪は入らなかった。そして荒川はまた輪の装填へ。長野には追いつくチャンスが生まれた。

 1分23秒過ぎ、長野は自陣ポール3本目を決めて3対8とし、これから逆転というときに、左前方の駆動輪(モーター)が故障して回転してなかったのか、中央ポールの複数本掛けの位置に行けずにいた。試合開始直後から走行軌跡が前の試合までとは違い、蛇行していたが、まさか手負いの三輪で競わねばならないとは思ってもみなかったのではなかろうか。そしてさらに荒川が直ぐに戻ってきた。荒川の全装填は長い時間が掛かるが、相手陣だけ3本分であれば数十秒で戻ってくる。今度もまたVゴール狙いのようだった。だが、これは後から試合を見返してわかることでもあったが、ここで荒川が戦術選択の判断を誤り、勝てる可能性を減らしてしまった。中央ポールで加点する選択があったはずなのだ。長野は、もう一度荒川に撃たせてしまえば、中央ポールの複数本掛けで同点か逆転が可能になったとこの時考えていたとしてもおかしくはない。そしてまた、お互い相手の出方を窺いながら、今度は中央ポールという障害物もない直接相手のロボットが見えるスタートゾーン寄りのスローゾーンで両者は対峙していた。

 荒川も長野の考えを読んでいたに違いない。敢えてリスクをとってVゴールで決着をつけようとしていたのだし、そうしなくても得点差で勝てるのだから、輪を放たずにいてもよかったのであった。輪を撃ってこないそんな荒川に対し、1分56秒過ぎ、時間がない長野は奇策に出た。荒川に長野大きい輪を浴びせて荒川の射出準備状態を乱したのだ。荒川の輪は外れかかった。荒川は慌ててスタートゾーンに戻っていった。長野も同点・逆転の切り札を使ってしまったためスタートゾーンへ戻らざるを得なかった。

 2分7秒過ぎ、荒川が先に飛び出し、長野も追随。また暫くスタートゾーン寄りのスローゾーンで暫く睨み合いとなってしまった。このままでは得点差で負けてしまう長野であったが、荒川をよく観察したのであろうか、それとも同点・逆転に賭けたのであろうか、試合終了が押し迫る2分48秒過ぎ、長野が中央ポールの複数本掛けに動いた。長野が守っていたポールの前が空いたのを見て、荒川が輪を放つが入らず、一方長野は中央ポール二本掛けを成功させ、試合終了時間の3分ジャストに8対8の同点に追いついた。

 同点の場合は審査員判定がされることになっており、通常の場合は審査員が挙げた赤か青の札の多い方が判定勝ちとされるのだが、審査委員長は再試合を宣言した。

決勝戦 再試合

 決勝戦後に長野の四輪ある駆動輪のうちの一輪が故障していて、試合中に「正常に」動いていなかったことが判明し、短い時間でモーターの交換作業にあたっていた。前の決勝戦で、最初に中央ポールの複数本掛けの位置に行けなかったときに動いていなかった駆動輪は、中央ポール・相手陣ポール側が正面・前だとすると、右後ろだったのだが、試合時間終了直前は四輪全て回転しており、また再試合前に交換したのは左前だった。短い時間で原因の特定が適切であったことは試合を見れば明らかだが、本当はどういう故障だったのだろうか。

 序盤、長野が先に得点し始めるが、直ぐに荒川は一斉に輪を入れ始めた。長野は自陣ポール中央を守ったが、開始16秒で2対8と逆転された。そして荒川が輪の装填にスタートゾーンへ戻っていき、ここまでは前の試合と同様の展開であった。

 23秒、長野は前の決勝戦で決められなかった最初の自陣ポール3本目を決めた。そしてここから本来の力を発揮し始め、42秒に中央ポール3本掛けを成功させて13対8と状況を一変させた。得点差を縮めようとしない荒川にVゴールさせなければよいだけになったのだった。

 長野は自陣ポール中央の前で防御に戻って追加点の準備をしていると、1分過ぎに大きな輪を装填した荒川がスローゾーンに戻ってきて、長野が守るポールへ向けて輪を放った。荒川も考えたのであろうが、長野の防御装置はこれを阻止した。荒川は輪の装填へ、そして長野は荒川のVゴールを砕きながら次々と、中央ポール2.5m左、3m、2.5m右に輪を入れて16対8とし、荒川を引き離した。

 1分46秒過ぎ、再度大きなを装填してスローゾーンに戻っていた荒川がVゴールを狙って輪を放ったが、長野は心配した様子を微塵も見せずにこれを防いだ。全くの憶測になるが、この時点で長野には荒川が逆転の機会を自ら摘んだように見えていたかもしれない。

 1分55秒過ぎ、長野は相手陣ポール左に輪をいれ、17対8とし、Vゴールまであと2本に迫った。荒川のお株を奪うVゴール勝利も正に視野に入ったのだった。

 2分12秒過ぎ、荒川が今度は小さな輪を三つ積んでスローゾーンに再び戻ってきた。そして試合終了間際に3本の輪を放ってきた。3本投げた輪のうち2本は入ったが、Vゴールとなってしまうポールへは長野は確りと守りきった。長野は17対10で関東地区大会を制覇した。

全国大会

全国大会初戦 2回戦第1試合

 都城高専の「進め!みやこのゾウ(ススメ!ミヤコノゾウ)」と対戦した。この都城のロボットは大量得点は長野ほどの大量得点は見込めないものの、Vゴールが可能な狙撃型で、相手陣ポールもあまり外さずに輪が入れられ、ゾウをモチーフに可愛くディフォルメした装飾に似合わず、油断のならない対戦相手であった。

 開始22秒で長野も都城も自陣ポール3本に輪をいれて同点の3対3だったが*4、長野はスタートゾーンから最も離れた3本目の自陣ポールを入れてから直ぐに中央ポールに寄って二本掛けを成功させて8対3とリードし、若干の余裕を得て大きな輪を装填しにスタートゾーンへ戻った。1点ず加点されるなら、間に合うという算段であったのだろう。

 守りのないうちに相手陣ポールに輪を入れようとしていた都城が全く輪が入らないでいてくれたのは幸いであったことだろう。51秒過ぎ、長野は大量得点差を築くべく、中央ポールへの複数本掛けの所定の位置に向けて飛び出したが、突然動かなくなったのかリペアを宣言した。しかし、都城が輪をスローゾーンで輪を打ち続けていたためにリペアを実行できず、都城がスタートゾーンへ戻るのを黙ってみているしかなかった。

 都城が輪を撃ち尽くしてスタートゾーンに入ったのは2分過ぎであった。その間、長野側のポールの中央に一つ輪を入れられ8対4となっていた。長野のメンバーは大急ぎでC-RAZairに駆け寄りスタートゾーンまで担いでからリペアを始めた。入れ替わるようにして輪を装填した都城がスローゾーンへ飛び出し、中央ポール3m、中央2.5m左と輪をいれ8対6と差を詰めてきた(2分27秒)。

 2分26秒に問題を解消した長野が再びスローゾーンへ戻り、一旦都城の相手陣ポールへの射出を警戒して自陣ポールの中央に行ってから、中央ポール複数本掛けを狙うために競技フィールドの中央寄りに移動した。都城が1輪ずつの装填と射出を繰り返していた時間と残りの試合時間から最悪の場合でも同点にしかならないという計算があったのかもしれない。そして、2分44秒、長野は中央ポール三本掛けに成功して18対6と大差をつけ、直ぐに自陣ポールの防衛に舞い戻り、試合の終了を待った。

 結局、18対6の大差では勝ったが、負けることも意識させられたに違いない。相手の調子の悪さで運よく勝ちを拾えたようだった。辛勝であろう。

準々決勝第1試合

 対戦相手は近畿地区選出チームによる初の全国制覇の期待を掛けられているチームの一つである奈良高専の「大和(ヤマト)」であった。関東甲信越地区大会で対戦した荒川の「荒鯊(アラハゼ)」のような一斉射出で速攻型ではあるが、長野の程ではないにせよ大量得点も可能であり、荒鯊のVゴールを防いだ実績のあるC-RAZairにとっては、分がある得点争いで「通常通りに」競技する他なかった。

 序盤から試合時間半ばまで、両チームともロボットもヒトも緊張が解れ、疲労によって普段の調子が出せなかったのだろうかと思われても仕方が無いほど、性能を発揮できず、ミスを繰り返した。奈良が通常とは違う射出順序で次々に射出した輪は、自陣ポール3本と相手陣ポール中にしか輪が入らず、少し遅らせて中央ポールへ放った輪も、2.5m右には輪が入ったが、複数本掛け用の輪は2.5m左のポールの頂上に引っかって得点にはならなかった。そして奈良が何かのペナルティを受けていたのかわからないが、25秒でスタートゾーンへ引っ込んでからおよそ2分までスローゾーンに出てくることはなかった。一方の長野は、先ずは自陣ポールを守りながら、自陣ポールに一つずつ輪を入れていく作戦であったのだが、最初の1本目の自陣ポールは最初の1回を外し、3本目の自陣ポールは若干大きな輪に変更しても4本目にしてやっと輪が入ったという調子の悪さであった。特にそのポールの3回目の輪を射出した直前に注目すると、走行操作を誤ってスローゾーンのフェンスに機体をぶつけ、輪が装置から外れたことがストリーミング映像などで確認できる。奈良が何時いつでてくるのか分からない中で、出てくる前に逆転をしたかったのであろうが、落ち着いて競技が出来ていなかったようだった。

 奈良がスタートゾーンから出てきた直後に

 1分49秒に自陣ポール3本目に輪を入れた長野は、中央ポール複数本掛けで逆転を狙いに中央ポール側に寄り、輪の射出しようとしたが、ちょうど奈良がスタートゾーンから出てきたのが影響したのか、輪は2.5m左にしか入らず1点を加点しただけだった(4対5)。そして直ぐに防御体制に入った長野だったが、ここでも慌てたのか、奈良が既に輪をいれていたポールの前に移動してしまった。その直後奈良にまだ輪が入っていないがら空きの自陣ポールが狙われたが幸いにも入らなかった。そして両者は輪の装填にスタートゾーンへ戻っていった。

 2分32秒、全チーム中最大の輪である「サンバースト」で奈良に先に中央ポールの三本掛けを成功され、4対15と引き離された長野だったが、その10秒後に三本掛けに成功して14対15とした。大会最高得点記録を保持する長野の面目は保たれ、そして残り時間は少なかったが、同点か逆転の可能性を引き寄せてはいた。外したことない大きな輪で中央ポールを狙う選択もあったが、長野には時間がなかった。搭載済みの小さい輪で狙うことを選択し、試合時間終了間際で二つの射出装置から同点以上を信じて二つの輪を放ったが、かなわず、14対15の僅差で大会を終えた。

 因みに、両者の合計点数29点は地区大会も含めても最高点であった。

長野高専A C-RAZair(シーレーザー) 画像URL

関東甲信越地区大会 出場校データチェック ページより

上記サイトの都合で画像が閲覧できないことがあります。

特徴

  • 移動システム:四輪メカナムホイール
  • 射出エネルギー源と格納方法1:圧縮空気(ペットボトル)
  • 射出装置1:エアシリンダ押出カタパルト(押出型)(自陣)x1
  • 射出装置2:エアシリンダ押出カタパルト(オーバースロー型)(中央・相手陣)x2
  • 照準/測位システム:自陣ポールは超音波センサーで距離を計測。自陣ポールの前に居る限りにおいては、中央・相手陣ポールへの簡易な位置検出装置となる。
  • 通信システム:未確認
  • コントローラー:ゲームパッドx2
  • 操縦者:2名
  • 自律機能/自動機能:自陣ポール用の超音波センサーによってポールまでの距離を計測し、その距離によって射出に最適な位置にくると自動で輪を放つ。
  • 妨害装置:輪を3本利用して最上部に張り出させて自陣ポールを守る

メカナムホイール

 第28回大会「輪花繚乱」では、駆動輪にメカナムホイールを採用したチームが多数あったが、多くは次の図のように、八方向の移動と回転を逐次的に組み合わせて移動と方向を変えていた。ただし、メカナムホイールであれば、次の図の2番の回転がなくても、3番のように進むことは可能であり、方向を変えたければ4番だけで十分である。*5

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 C-RAZairは、上の図のような移動もしていたが、特に自陣ポール付近から中央ポールへ複数本掛けに移動したときに際立っていたが、次のような滑らかな移動を1回の操作でしていたように見えた。

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 ひょっとすると、メカナムホイールの四輪それぞれの回転速度と回転方向をミリ秒単位で制御プログラミングをしていたのかもしれない。もしそうだとしたら、直線移動しながら機体を回転し続けることも可能なのだろうか?このブログを始めた頃に、メカナムホイールについて疑問に思っていたことを記しておいたが、C-RAZairを見るにつけ不思議に思うことが増えてしまった。

 因みに、関東甲信越地区大会決勝の映像をみると、試合時間終了間際の複数本掛けの射出位置へ向かいときには四輪が動いていたので、移動補償性はないのかもしれない。論文を漁ってみたら、答えがみつかるのだろうか?

kosen-robocon.hatenablog.jp

射出装置

 自陣ポールへの輪の射出装置は、エアシリンダの伸張で輪を押し出す構造を採用しており、また超音波センサーを利用した自動射出装置であると出場校データチェックのページに記されているが、恐らくセンサーで測定した距離が設定した値以下になると射出をする仕組みである推測する。他のチームのこうしたセンサーを利用したロボットも含めて、自陣ポールを外した後に輪の装填のに来たときにはこうしたセンサーを反応させないように何か工夫をしているのだろうか?また、このセンサーは自陣ポールのためだけではなく、十中八九あたっていると思うが、自陣ポールの前に居る限りにおいては、中央ポールと相手陣ポールへの射出位置を確定するためにも利用されていたことだろう。

 中央ポールと相手陣ポールへの輪の射出にもエアシリンダの伸張を利用しており、その伸張運動を投石器型(オーバースロー型)の腕に伝えて輪を射出する。中央ポールと相手陣ポールへの到達高さと距離、そして方向を変えられるので、自陣ポール中央の前にさえ居れば、ロボットを移動させずに中央ポールと相手陣ポールの6本に移動せずに輪の射出が可能である。そしてこれが2つ並んでいる。それぞれ専用の担当操縦者がおり、一度に二つのポールを狙うことが可能となっている。さらに、二つ同時に動作させることによって、大きな輪を中央ポールに投げて複数本掛けが可能となっている。これは想像であるが、そのときには優先される操縦者が輪の発射を担当するのだろう。

 試合中に中央ポールへの輪の三本掛けが成功したのは、地区大会も全国大会も成功した長野高専のC-RAZair、地区大会で成功した大分の「Golgoole(グルグール)」、全国大会で成功させた奈良の「大和(ヤマト)」の3チームだけである。奇しくも、この3チームのロボットはそれぞれ射出方式が全くことなっており、それぞれの射出装置の代表としてもよい機能と性能を持ち合わせていたと評価してよいだろ。その中でもC-RAZairの投石器型の射出装置は、得点した実績からいえば、全国一と称えてよいのではないか。

フレームと防御装置

 中央ポールまたは相手陣ポールへ射出する方向が正面(前)だとしたら*6、後ろ側にオーバーハングした断崖のように迫り出している構造となっている。その長さは車体本体に程もあり、中央ポール・相手陣ポール用射出装置の装填装置や自陣ポール用の射出・装填装置を載せ、さらに上方にポール防衛ようのホースを3本ほど載せていて、後方に倒れる心配を持たせるような構造をしているが、殆どそのような状態をみることは無かった。構造体の重量バランス、重心位置がよかったのであろう。

 投石器型射出装置が起こす振動・衝撃が大きなまま機体全体に伝わることがなかった。どのような工夫・設計がされていたのか?

書き足りない

 まだまだ書きたいところであるが、後日書き足すことにする。

*1:湯沢温泉スキー場にも、八方尾根スキー場にも、松本城飯田線にも行った事があり、学生時代に佐久や小諸あたりの学友がいて長野県の事情に触れたことがある者としては、某大河ドラマに摺り合わせるのは地域的に乱暴な扱いかもしれないと思っております。

*2:C-RAZairのメンバー達はそう思っていたかは分かりませんが、試合映像を見ている限りは、態々予行演習をしているように見えてしまいます。

*3:これ、どっちだったか教えて欲しいです。3本目の移動が結果的に荒川に撃たせるためのフェイントとなるので、どっちもであるという解答な気がしますけどね。フェイントするためだけだとしたら、試合のシナリオを何本も考えていた可能性もあって、恐ろしい。

*4:本当は19秒で都城が先に3本とっていたんですが、省略しました。

*5:どちらかで回転することを考慮した図にしました。

*6:メカナムホイールではなく、車輪であったら、本当は左か右なんでしょうね。