高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

奈良高専B 射抜け!わぶさめくん(イヌケ!ワブサメクン)

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試合内容

  初戦は1回戦第4試合で、対戦相手は大阪府立大学高専Aチームの「動!動!動?(ドウドウドウ)」であった。大阪府大チームは電子回路に電力を供給するための乾電池切れを起していたために試合開始から暫くはスタートゾーンから動けずに居たために、奈良の「射抜け!わぶさめくん」のワンマンショーが始まった。自陣ポールに順調に「射抜き」、がら空きの相手陣ポールを狙うなどしてから、中央ポールの1本を「射抜き」、4対0で勝利した。

 続いては2回戦第4試合、明石高専A「わっさん」との対戦であった。優勝候補の一角であることから、苦戦が予想されていたが、序盤は「わっさん」の調子の悪さも手伝って、自陣ポールでの得点であるが、明石に得点で追いつき逆転し、開始一分過ぎではまだ3対3の同点であった。その後調子を取り戻した「わっさん」にどんどん得点され、2分35秒にVゴールされ、負けてしまった。

奈良高専B 射抜け!わぶさめくん(イヌケ!ワブサメクン) 画像URL

NHK高専ロボコン ライブストリーミング サイト 近畿地区大会 出場校データチェック ページより

上記サイトの都合で画像が閲覧できないことがあります。

特徴

  • 移動システム:三輪オムニホイール(駆動用)+二輪補助オムニホイール
  • 射出エネルギー源と格納方法1:金属バネ+2次電池
  • 射出装置1:金属バネ引張弾性利用カタパルト(コンパウンドボウ型)(汎用)x1
  • 照準/測位システム:なし(目視)
  • 通信システム:未確認
  • コントローラー:ゲームパッド
  • 操縦者:1名
  • 自律機能/自動機能:未確認
  • 妨害装置:なし

射出装置

 金属バネの引張り弾性を利用した、フックで輪を引っ掛けて飛ばす、航空母艦型を鉛直方向に立てた、全国でも唯一のカタパルトである。その他、弾性エネルギーを蓄えるときに弓に見立てた機構部分がしなる演出をしているように見える。間近で見ていないのでよくわらないが、実際は演出ではなく機構の一部として機能しているのであろう。大会後の交流会などでも披露されていたようだが、この目で見てみたかった。

 輪の装填装置から移動してきた輪を掴んで押さえる装置にエアシリンダーを使っているのは理解できたが、輪を飛ばす機構的にエアシリンダー(圧縮空気)は何のために利用されているのか理解できなかった。輪を飛ばすための元々のエネルギー源が二次電池だけなのか、圧縮空気も使っているのかよくわからないのである。最初に1段階目の弓の弦を引くためにエアシリンダーを使っているよう見え、続いて二次電池をエネルギー源とするモーター駆動の機構でさらに弦を引き、射出準備完了となるように見えた。単に四節リンク機構(てこクランク機構/crank-rocker linkage)が弦に届かないからエアシリンダーによる第一段階の弓を引く動作を付け足したのであろうか?また、金属製のバネは弓のところに二つしか見えないが、それだけであんなに飛ぶのかどうかも不思議に思っている。「射抜け!わぶさめくん」を開発した学生さんがこのブログを見ていたら、お手数ですがテキスト化してコメント欄で解説して欲しいです。*1

 試合をみたときの第一印象で「けっこうグラグラしている」と思った。Aチームの大和にも似たようなことを思ったのだが、これは意図的または設計なんだろうか?また、輪をもう少し長くつくれば、中央ポールなどにも入り易くなると思うが、何か限界があったのだろうか?

deviceplus.jp

加筆

 「射抜け!わぶさめくん」の弓のような射出装置はコンパウンドボウの構造・機構を参考にして作られたそうである。コンパウドボウは、剛性の高いハンドル部の構造材と弾性力の強い金属からなるリムなどが組み合わされており、そのために強い力で弓を引かなければならないが、滑車と連動する弦によって効率よく引くことができ、保持も容易で、初速の向上と命中精度の向上が図られた弓である。

Compound Bow full.jpg

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移動システム

 前回大会「出前迅速」に出場していた「でりかん」は三輪オムニホイールを駆動輪にして移動していたが、そのシステムを再利用しているのだろうか。

2台体制と路線

 2013年第26回大会"Shall We Jump?"に出場していた奈良高専の2台、「じゃんぺん」と「XBoxer-One(エックスボクサーワン)」のように、「大和(やまと)」と「射抜け!わぶさめくん(イヌケ!ワブサメクン)」も、1台が地区・全国大会優勝目標路線、もう1台がその路線とは別の「魅せる」路線が踏襲されているように思えた。その二つの大会に参加していた学生の顔を比べてみたり、今大会の番組などから、1組織で2台を開発・製作しているようである。

 1組織で2台の体制は奈良に限らないが、今回の香川高専詫間キャンパス*2や呉高専のように、優勝狙いの殆ど同じなロボット2台でエントリーするのがよいのか、それぞれ異なる路線でエントリーするのがよいのか、課題・ルールや体制、学生の資質に因るだろうが、考えどころであろう。今回の奈良高専は、完全な優勝路線で「大和」が全国大会で優勝そして大賞受賞、魅せる路線で全国大会エキシビジョン出場という、大正解・大成功の路線選択をしたと言ってもよいだろう。過去にこれを上回る成功を成し遂げたチームはあっただろうか?(初めてDBに記述すべきだろうか?)*3

 ついでにAチームの記事に追加しておいた。

kosen-robocon.hatenablog.jp

*1:Youtubeの解説音声が聞き取り難いのです。

*2:詫間キャンパスは今回に限りませんね。

*3:地区大会で同校対決、優勝・大賞をとった場合よりも成功と言えるか?