高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

仙台高専名取キャンパスA Re:act(リアクト)

 先日、「輪花繚乱」に参加したあるロボットの解体を撮影した画像付のtweetを見つけた。尋ねると、3DCAD用のデータは残したのだという。また、練習では16秒でVゴールできていたとのこと。2番目の速さだろうし、中央ポールや相手陣ポールを外してももう何本か放てることを優勝したチームメンバーは脅威に感じていたようであるし、悲運の名機としてよいのではないか。今回の扱うロボットも最速Vゴールを狙って勝ち進む野望もった悲運の名機だったのだろうか?

 

youtu.be

奈良高専「大和(ヤマト)」リーダーによる長岡高専「Nagaoka-Fireworks(ナガオカファイヤーワークス)」への言及

 これまでの大会の悲運の名機について誰か書いてはくれまいか。類稀なるアイディアであったが地区大会に優良でユニークなアイディアロボットが揃っていたために全国大会に進めなかった、最高の性能を発揮したのに推薦されなかったなど*1、そうした悲運に付随した逸話が発掘され詳らかにされることを願う。*2

試合内容

 2回戦第1試合。仙台高専名取キャンパスAチームの初戦の対戦相手は一関高専Bチームの「百式砲(ヒャクシキホウ)」であった。どちらも最速Vゴールを狙う戦術を持つロボットであり、一瞬でどちらかが勝利する雰囲気が漂う中、試合が始まった。

 一関が、自陣ポール3本、中央ポール3本、そして相手陣ポール中と左と、Vゴールに1本足りないポール8本8得点を開始20秒で達したのに対し、仙台名取は射出位置の調整に手間取っていたのか自陣ポールに輪を放てずにいた。31秒に仙台名取は自陣ポール3本に対して3本の輪を放ったが、自陣ポール右の1本が入らず(2対8)、輪の装填にためにスタートゾーンへ。

 59秒過ぎ、先に輪の装填に入っていた一関より先に輪の装填を済ませてスタートゾーンを飛び出した仙台名取は自陣ポール3本目に輪を放ったが入らず、また装填のためにスタートゾーンへ。入れ替わるようにしてスローゾーンに出てきた一関が相手陣の9本目となるポールに輪を入れたため、仙台名取は1分35秒で一関にVゴールされて負けてしまった。

 仙台名取は初戦であったため、試合を続け、自陣ポール3本目に輪をいれて3得点としたようだが、映像は残っていない。

仙台高専名取キャンパスA Re:act(リアクト) 画像URL

東北地区大会 出場校データチェック ページより

上記サイトの都合で画像が閲覧できないことがあります。

特徴

  • 移動システム:同位相四輪操舵四輪駆動
  • 射出エネルギー源と格納方法1:定荷重バネ(+ペットボトル(トリガー用?)
  • 射出装置1:定加重バネ利用カタパルト(押出型)(自陣、中央、相手)x(3+3+3)
  • 照準/測位システム:なし(目視)
  • 通信システム:未確認
  • コントローラー:ゲームパッド
  • 操縦者:1名
  • 自律機能/自動機能:未確認
  • 妨害装置:なし

四輪操舵四輪駆動

 「輪花繚乱」に参加した殆どのロボットがオムニホイールかメカナムホイールなどの特殊な車輪を用いた移動システムを採用していた中で、"Re:act"はそのような車輪を用いず、同位相四輪操舵四輪駆動システムを採用していた数少ないロボットである。射出方向を変えずとも9本全てのポールを狙える仕様であるので、都城高専の「進め!みやこのゾウ(ススメ!ミヤコノゾウ)」のように対角逆位相で車輪の向きを変えて回転する必要はないようだ。沖縄高専のポールオブザリングも同じシステムを採用していた。

  ところで、四輪操舵四輪駆動システムを初めて高専ロボコンに持ち込んだのは1990年第3回大会「ニュートロンスター」で優勝した旧仙台電波高専(現仙台高専広瀬キャンパス)の「テト坊(テトボウ)」で間違いがないだろうか?ボールの上に乗ってから同位相のシステムであった。競技フィールドに触れていた車輪に対するシステムとして初めて採用したのは、1991年第4回大会「ホットタワー」で全国大会準優勝した徳山高専の「白猫号(シロネコゴウ)」(逆位相)、その白猫号と二回戦で対戦した有明高専の「はこもてぃー」(同位相)だろうか?

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定荷重バネ

 9本のポールそれぞれ専用の射出装置が用意されている。それら全ての射出装置のエネルギー源が定荷重バネの弾性力である。採用されている定荷重バネは巻き取り式で、巻いている状態のバネを引っ張り、伸ばすことで射出に必要なエネルギーを蓄える。

 定荷重バネは引っ張り出した長さに関係なくバネ自身が巻き取る力が一定である。平らに伸ばされた板状のバネが曲がって巻いていくところだけで力が発生するのである。巻いている間はこの力が一定である。この特性を利用して、輪の射出速度を、直感的に分かりやすく、リニアに調整可能にしていると推測する。それぞれの射出装置の仰角は固定されているようなので、射出速度で調整するしかなく、定荷重バネを引き伸ばした長さを微調整して輪の到達高度と距離を変化させているのだろう。*3 

 輪の射出時のトリガー(引き金)にはペットボトルにつめられた圧縮空気をエネルギー源とするバルブを利用しているようだ。

 移動システムは異なるが、全く同じ戦術と機械要素を持つロボット、北九州高専の「風輪華山(フウリンカザン)」が存在している。その記事を書いていた当時は「定荷重」のことは頭に全く浮かばなかったのでただのゼンマイとしていたいたが、おそらく定荷重バネを利用していることは間違いないだろう。*4 

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サミニ 定荷重ばね SB型 4541
 

*1:推薦ルール上とそうでない場合があるでしょうが

*2:学校だよりにはそうした逸話が掲載されていることが多いらしい。

*3:微調整用の部品がついているようには見えないけど...

*4:後ほど修正しておこう。