高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

小山高専B 輪Navi君(ワナビークン)

試合内容

地区大会

初戦、2回戦第5試合

 茨城高専Bチームの「RING。(リング)」と対戦。茨城が1分以上かけて自陣ポール3本までしか入れられずにいる一方で、まるで調整の確認のために動かしているように1点ずつ得点していき、Vゴールまであと1本までとした小山が8対3で快勝した。

準々決勝第1試合

 優勝候補の一角である長野高専Aチームの「C-RAZair(シーレーザー)」と対戦した。序盤の自陣ポールではほぼ両者ほぼ同時に輪を入れていき、23秒で3対3の同点であったが、小山は相手陣左に決めて1点を追加したのに対して長野が中央ポール3本掛けで10点を追加してきたため、44秒で13対4と大差をつけられてしまい、中央ポールの複数本掛けが出来ない*1小山が勝つにはVゴールを狙うしかなくなった。

 小山は先ずは長野が防衛できない中央ポール3本に輪を入れて14対7(1分32秒)とし、試合を折り返した。残すは長野が守る相手陣ポールの中と右の二本であった。

 1分47秒過ぎ、小山は長野が守る相手陣ポール中に放ったが、長野の輪を利用した防御装置に阻まれた。そして小山は相手陣右を狙うためにスタートゾーンのほうへ移動し、長野もそれに合わせて移動した。

 2分3秒過ぎ、小山は長野が守る相手陣ポール右に輪を放ったが、今度は一瞬速く射出していた長野の輪にその輪が打ち落とされてしまった。偶然衝突したのか、狙われたのか。
 2分12秒過ぎ、小山はもう一本輪を放つが、またも長野の防御装置に阻まれてしまった。そしてスタートゾーンへ。長野もそれにあわせてスタートゾーンへ。
 2分33秒過ぎ、小山はスローゾーンへ戻った。長野も追従してきた。小山は完全に長野に合わせられているようであった。
 2分48秒過ぎ、小山は、相手陣ポール右に、強めに、仰角高めで輪を放つが、輪はポールに引っかかるどころか、競技フィールド外へ飛び出していった。

 終了間際に、小山はもう一輪放つも、それも競技フィールド外へ飛び出していき、試合終了。長野にダブルスコアで負けてしまった。

全国大会

初戦、1回戦第4試合

 連続Vゴール勝ちをして地区優勝をしたロボットの一つ、鈴鹿高専の「メカロン」と対戦。鈴鹿とは2012年第25回大会「ベストペット」で同じ技術を使う注目のロボット同士で対戦して負けたことがあるだけに対戦成績を五分にしておきたいところであったかもしれない。*2

 開始早々、テストランで最速18秒台の10秒台のVゴールを連発していたという鈴鹿のメカロンがトラブルでスタートゾーンから動けずにいたのとは対照的に、小山は23秒で自陣ポール3本に輪を入れて0対3とした幸先良く序盤を制した。そしてその直後、全国大会から用意した中央ポールの複数本掛け用の大きな輪を装填しにスタートゾーンに戻っていった。初めからか、相手をの状態をみてからか分からないが、Vゴール狙いよりも大量得点狙いの作戦を選択したのは間違いない。

 44秒過ぎ、鈴鹿がトラブルを解消してスローゾーンへ飛び出し、自陣ポール3本、相手陣ポール2本、そして中央ポール2.5m2本に輪を決めていきあっというまに7対3(1分4秒)と逆転され、Vゴール負けは免れたものの、形勢が不利になった。そこで形勢をよくしようと、小山は中央ポール複数本掛けをしてみたものの、1本にしかかけられず7対4、両者装填のためにスタートゾーンに戻って試合時間を折り返した。

 ちょうどその頃、鈴鹿が相手陣ポールに輪を放ったときのロボットのサイズが規定を超えていたということで、相手陣ポールに入っていた2点が減点されて、7対4から5対4にされた。そして先にスローゾーンに戻った小山が中央ポール2本掛けに成功して5対9、さらに中央ポール2.5m左にも入れて、5対10とダブルスコアで逆転した(2分17秒)。そしてそのまま試合が終了し、5対10で小山が勝利した。

 しかし、審判団と得点係の間に何らかの伝達ミスがあったのか、実は8対10であった。小山は複数本掛けが成功していなかったら、8対6で負けていたのであった。

2回戦第5試合

 19年ぶりの決勝戦と近畿地区チーム初の全国制覇を狙う近畿地区優勝の明石高専と対戦。小山とは似た戦術を仕掛けることができるが、初めから複数本掛け用の輪を搭載している明石が有利だったのだろうか。

 序盤の自陣ポールでは、明石にリードされていたが、明石が3本目を外してスタートゾーンへ戻ったので、小山はその隙に逆転して3対2(26秒)。さらに引き離そうと、大きな輪を装填しに小山もスタートゾーンへ戻った。

 先にスローゾーンへ戻った明石が自陣ポール3本目に輪を入れて3対3の同点とし(54秒)、そしてそのまま中央ポールへ二本掛けを行おうとしたが、装填していた大きな輪が外れたため、とりあえず小さい輪を中央ポール2.5m左に入れて3対4(1分9秒)と逆転。その直後、小山は中央ポール2本掛けに成功し、8対4と再逆転。そして両者スタートゾーンへ。明石が先にスローゾーンに戻って二本掛けにいこうとしたが、また明石の装填していた大きな輪が外れたためかVゴール狙いに切り替えたようで、1分49秒に中央右に輪を入れられ得点は8対5、そしてVゴールまでの本数は同じになり、明石に詰め寄られた。

 そしてここで、小山は痛恨のミスを犯したかもしれない。中央ポールの二本掛けを成功させたポールに同じく二本掛けをしてしまった。加点して10対5とリードを大きくできたが、Vゴールまでのポールの本数を減らすことができなかったのだ。

 リードしていた小山はここからさらに明石に追い詰められていった。最後の40秒ほどを追ってみた:

  • 2'08 10-6 明石、中央ポール3mを獲得(Vゴールまで小山あと4本、明石あと3本)
  • 2'15 10-7 明石、相手陣ポールの右を獲得(Vゴールまで小山あと4本、明石あと2本)
  • 2'16 11-7 小山、中央ポール2.5m左を獲得(Vゴールまで小山あと3本、明石あと2本)
  • 2'26 11-8 明石、相手陣ポールの左を獲得(Vゴールまで小山あと3本、明石あと1本)、明石はこれで、最後の1本、Vゴールの調整に集中さえすればよかった。
  • 2'31 12-8 小山、相手陣ポールの中を獲得(Vゴールまで小山あと2本、明石あと1本)、小山は相手陣ポール二本いれなければならず、調整を2回しなければならないが、明石は既に最後の一本の調整中である。
  • 2'42 13-8 小山、相手陣ポールの左を獲得(Vゴールまで小山あと1本、明石あと1本)。数字上は並んではいるが、明石が先にVゴールへの最後の射出の準備にはいっていた。
  • 2'47 13-9V 明石に先に最後の1本を決められ、小山は負けた。

小山高専B 輪Navi君(ワナビークン) 画像URL

関東甲信越地区大会 出場校データチェック ページより

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特徴

  • 移動システム:四輪オムニホイール+四輪補助輪
  • 射出エネルギー源と格納方法1:ゴム+圧縮空気(ペットボトル)
  • 射出装置1:ゴム引張弾性利用カタパルト(布拡げ型)(汎用)x1
  • 照準/測位システム:なし(目視)
  • 通信システム:未確認
  • コントローラー:ゲームパッド
  • 操縦者:1名
  • 自律機能/自動機能:未確認
  • 妨害装置:なし

遺産

 輪Navi君には、2011年第24回大会「ロボ・ボウル」で地区大会準優勝、全国大会1勝の「速球ぱらボルト(ソッキュウパラボルト)」、そして2012年第25回大会「ベスト・ペット」で地区大会優勝、人気投票第1位、大賞受賞の「フレンドルフィン」などの機構を基本にホースの輪を投げるために改良された、非常にユニークで、伝統と実績がある射出装置が一つ搭載されている。飛ばしたい物体を布で包んでおいて、その布を拡げて飛ばす。輪Navi君の場合、布を広げる射出時は引っ張ったゴムの弾性力を利用し、射出準備でそのゴムに弾性エネルギーを与える際にはペットボトルに充填した圧縮空気をエネルギー源にしたエアシリンダーを利用してゴムを伸ばす。

 布の素材には花見などで敷物として利用されるポリエチレン製のブルーシートを採用している。また、ホースのような細長いものを飛ばすために、板を入れるなどのホースに力を伝えやすくする工夫が施されている。

 地区大会では中央ポールの複数本掛けはできなかったようだが、全国大会では披露してみせた。ホースの構成を、1種から2種に変更したのだろうか?

 仰角と、布張り時の開閉角度による初速とで、ホースが到達する高さと飛距離が調整可能になっている。それぞれどうやって調節しているのだろうか?

 2011年の大会後に「速球ぱらボルト」の「布引っ張りボール投球システム」が1秒間に500コマ撮影可能なカメラで撮影されたようだ*3。エネルギー効率や適切な引張速度などの解析がなされてきたことだろう*4。 

TRUSCO ブルーシート #2000 1.8X2.7

TRUSCO ブルーシート #2000 1.8X2.7

 

*1:出来るんでしょうか?

*2:それより前に対戦したことはなかったのかな?

*3:小山高専の歴代マシンの速球ぱらボルトのページより

*4:空気抵抗は考慮しなくてよいのだろうか?