高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

香川高専詫間キャンパスB Force(フォース)

 2月です。一ヶ月間継続できました*1。定期的に読みに来て頂いている方の中には情報提供をしてくれる方もいらっしゃり、嬉しい限りです。

試合内容

 強いチームの試合内容を書かずにはいられない。

地区大会

初戦、1回戦第4試合

 香川高専高松キャンパスAチームの「Beehive(ビーハイヴ)」との対戦。1回戦なのに、実況アナウンサーに「事実上の決勝戦」と言わしめた試合である。恐らくは、高松のBeehiveは大会前日のテストランで最速Vゴールをやって見せ、大会関係者に優勝候補No.1と目されていたが、そのテストラン中にモータードライバーを過電流か何かで損傷させてしまい、翌日までに回路の修復と全体の調整が間に合うのかなどの不安要素があり、それに起因する何らかのハプニングやトラブルの予想を含め、彼らの次ぐらいに速かった何のトラブルもない詫間のForceとの白熱の試合展開が予想されてしまったからであろう。

 序盤の自陣ポールの獲得は、開始9秒という速さで高松に3対2とされ、一歩出遅れるが、14秒で3対3と直ぐに追いついた。中盤、高松が詫間の自陣ポールを狙ってきたところを妨害装置でブロックしつつ、中央ポールの獲得で詫間が一歩リードし、35秒で5対6するが、高松も直ぐに追いついて6対6の同点となり、このまま接戦が続くかと思われた。しかしここで高松の輪の装填機構がトラブルを起こし始めた。普段は1輪ずつ送り出すはずが2輪送り出すようになってしまい、リペアをするためにスタートゾーンに戻らざるを得なくなってしまった。詫間はこの隙に相手陣ポールに輪を入れだし、高松が復帰した1分8秒ぐらいには6対8とVゴールにあと一本と高松を追い詰め、その後直ぐに1分17秒でVゴール勝利した。詫間の強さは信頼性の高さにもあるのだろう。それが際立った試合であった。

2回戦、準決勝

 2回戦は高知高専A「¥猫(カネコ)」と対戦し、危なげなく1分18秒でVゴール勝利。続く準決勝は阿南高専A「AQSent(アクセント)」と対戦し、これまた全く危なげなく1分13秒でVゴール勝利。1分20秒未満のVゴールを三連続で行えたことから、信頼性・安定性の高さが覗える。

決勝戦

 同キャンパスAチームのEclipseとの対戦。試合前のインタビューで軽い舌戦を受けて立ち、試合を盛り上げようとする。緊張緩和のためであろうか。彼らは一見楽しんでいるように見えていたが、勝たないと全国大会へ行けないことから火花が飛び散っているように見えないこともなかった。だが見ている方は楽しめる。

 序盤、開始14秒で3対3の同点とし、これ以後Bチームはリードを築いて有利な試合を展開していくが、中央ポールはお互いの輪がぶつかり合う激戦となる。

 試合の折り返し地点である開始1分30秒で6対8としてVゴール勝利目前の状況を作るが、両者輪の補充にスタートゾーンへ戻ることとなり、先にForceがスタート地点を飛び出すもVゴールはならず、再度スタートゾーンへ。AチームEclipseはその隙に追いつき、8対8のどちらもVゴールをするだけの状況を作りだしたが、先にBチームForceがVゴールをあげ、勝利した。ローラーの差がでたのであろうか?

全国大会

1回戦第10試合

 序盤の自陣ポールは和歌山の「梅王(バイキング)」がリードしていたが、開始14秒で詫間は追いつき3対3の同点となる。全ての自陣ポールを先に得点していた和歌山の梅王は中央ポールには目もくれず只管相手陣ポールに輪を連射して叩きこもうとしていた。想像の範囲だが、詫間も、自陣ポールの中央を最後にしたことから和歌山の作戦には気づいていたかもしれない。打ち込まれる大量の和歌山の輪を防御装置で防ぐのがやっとの感じで、これ以後真ん中から動きにくい状況になってしまった。

 そんな状況でも流石は詫間である。和歌山が詫間のポールに1つの輪しか入れられない間に全ての中央ポールに輪を入れ6対4とリードした。それでも和歌山は詫間側のポールへの輪の連射を止めない。フィールドの左から入れにくければ機動力を活かして大きくフィールドの右側へ移動し輪の連射を続け、詫間が守っていなかった和歌山側からみて右側のポールに2つの輪をいれて6対6と同点に追いついた。ここまで開始45秒である。和歌山は中央ポールを悠々と入れればVゴールにあと1本でおまけに1点リードの状況に、一方の詫間はこれから相手陣ポール全てに入れなければならない状況になっていた。

 これも想像でしかないのだが、ひょっとしたら和歌山は詫間の弱点を見抜いていたのかもしれない。まだ輪を入れていない相手陣ポールを複数本残させ、動けない状況をつくれば、相手陣ポールの正面に移動できなくなるので、詫間がポールに輪を入れ難くなることを。そんな状況から30秒で、和歌山に、中央ポールをたて続けにきめられ、最後のポールも高弾道で防御装置を飛び越えられ、負けてしまった。アピールタイム中に真ん中の位置から各ポールに輪を飛ばしていたが中々入らずVゴールは決められなかった。連射力・機動力の違いで負けたのだろうか?

香川高専詫間キャンパスB Force(フォース) 画像URL

NHK高専ロボコン ライブストリーミング サイト 四国地区大会 出場校データチェック ページより

上記サイトの都合で画像が閲覧できないことがあります。

特徴

  • 移動システム:4輪オムニホイール(十字型配置)+4輪補助輪
  • 射出エネルギー源と格納方法1:2次電池(+輪の送り出し用圧縮空気(ペットボトル))
  • 射出装置1:2軸2モーターの挟み型ローラー(縦挟み)(自ポール)x1
  • 射出装置2:4軸6モーターの挟み型ローラー(縦挟み)(中央・相手)x2
  • 照準/測位システム:目視、射出角度を操縦者が確認できる
  • 通信システム:2.4GHz? or 920MHz?の製品独自通信プロトコル
  • コントローラー:プロポ
  • 操縦者:1名
  • 自律機能/自動機能:未確認
  • 妨害装置:あり(自陣ポール用射出装置あたりにネット)

ニ段階加速

 データチェックページには「ローラーを2段に配置して2段階に加速して輪を飛ばす」とあるが、これは輪を最初に加速させる1つのローラーに1つのモーターを割り当てている横挟みの1組のローラーの回転速度よりも、1つのローラーに2つのモーターを割り当てている縦鋏みの1組のローラーの回転速度のほうが速いということを意味しているのだろうか?それ以外に何か考えられるだろうか?1段目が滑るか回転数が落ちる可能性があり、本来の射出速度を与えられてない可能性もあるなら、同じ回転速度ということはありえる。最近、全国大会でHonda賞を受賞した記念の取材記事が公開されたが、回転数についての言及は無かった。

http://www.honda.co.jp/philanthropy/robocon/2015/honda-prize/images/ph_13.jpg

Honda Motor Co., Ltd. Honda賞取材レポート | アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト2015. 2016-01-30. http://www.honda.co.jp/philanthropy/robocon/2015/honda-prize/images/ph_13.jpg, (参照 2016-02-01).

 地区大会の番組では、その速さによって、輪の飛行姿勢が、前側が上がり、後ろ側が下がり、ポールに絡みやすくなったことを紹介していた。

 AチームのEclipseとよく似ているが、ローラーなど各所で大きな差があるようだ。特にローラーに関しては、AチームのEclipseは輪が最後に触れる1対の2つのローラーそれぞれに対して1つのモーターを割り当て、合計2つのモーターを使用しているのに対し、BチームのForceのは1つのローラーに2つのモーターが割り当てられ、1対のローラーに合計4つのモーターが使用されている。輪の射出速度と飛行姿勢に異なるアイディアで挑戦したということなのだろうが、仮に同程度の出力のモーターが利用されているとして、どの程度の違いがあったのか知りたいところである。また、モーターの回転速度の制御はあったのかも気になるところである。映像からは確認できなかった*2

地区大会への向けての軽量化

 『Honda賞取材レポート』に軽量化に苦労したとの記述がある。彼らは設計図を描かないようなので、重量の積算も製作前に行わないと想像する。そうだとしても、製作した一つ一つ部品や組み上げた部分の重量を測って積算していけるはずであるし、ある程度組み上がってくると予想がたてられるはずなだ。そういった手法をとらず、完成したのが地区大会三週間前ということなのだろうか?軽量化を諦めて装置の一つを取り外したチームが他の地区にはあったが、そういう妥協をしなかった姿勢にも強さの一因があるのかもしれない。とはいえ、彼ら独特の開発方法にもまだまだ改良点がありそうだ。今後改良を経てまだまだ強くなっていくチームでありそうだ。

 軽量化の細部を見て行きたいところだが、資料がないので想像の域を出ない。ひょっとしたら二つの射出装置のバッテリーレイアウトが軽量化で施した変更の一つかもしれない。重量物なので、本来なら機体下部に配置したいところだが、配線の重さまでも削ろうとすればローラーを回すモーターに可能な限り近い位置に取り付ける他はない。恐らくこのせいで重心は高くなり、機動性が犠牲になるが、感心することに、偶然かも知れないがオムニホイールの直上に置かれている*3

全国大会へ向けての改良

 全国大会では、算盤が並んでいる射出口が広がっていたり、プロポが2台になっていたりと、改良が施されていたようです。中でもプロポを2台にしたことに注目したいのですが、情報がないのでこれ以上はかけません。信頼性向上のために操作系を二重化したのか、射出装置の操作を分担しているのか、それとも移動だけ、射出角度か速度の調整だけを担当しているのか、全くわかりません。

トライボロジー

 輪を滑らせる部品の軽量化の為に算盤の珠に辿り着いたようであるが、そのアイディアそのもよりも様々なものを試したプロセスに注目したい。重量、コスト、転がり抵抗、整備性などを評価基準に様々なものを試したようだ。『Honda賞取材レポート』によると、潤滑剤としてベビー・パウダーも試したそうだ。このように摩擦や滑走に関しての知見・知識を深めることは今後に活かされることだろう。

 ところで、こうした摩擦に関する学問を「トライボロジー」というのをご存知だろうか。詳しくはトライボロジー学会やその他の解説に譲るが、摩擦や摩耗、潤滑に関することだけで一つの分野とされていて、あらゆる分野に応用されることから非常に学際的であり、私達に無くてはならない基盤技術である。「トライボロジー」と呼ぶことが提唱されてから今年で50周年を迎える。潤滑を中心に研究が進みが学問としての発展していったようであるが、摩擦が起きる物体の組み合わせに関する初歩的なものから*4、原子・分子・電子レベルの極微の世界で起きていることを理論的に研究・実証することまで様々あるようです。

参考:トライボロジーの語源と定義|一般社団法人 日本トライボロジー学会

 初歩的な問題、モノとモノが接触して起きる摩擦の最良/最適な組み合わせを探すことに苦労することはある。これは組み合わせ数の爆発的増加が起こるからである。世界的に有名な某日本企業には地球上のあらゆる物体同士の摩擦係数があらゆる環境条件で検索できるデータベースががあると耳にしたことがある。地球上のあらゆる物体というのは誇張されているだろうが、摩擦係数を計測したスタッフには敬服するし、その企業が世界でトップレベルを維持するための一助となっているに違いない。

 さて詫間のロボットに戻る。算盤の珠は輪に対しておそらく点接触と考えてよいだろう。では、算盤の珠を貫いているネジ/ボルトはどうであろうか?各種の画像から鍋形状の頭部を持ったメートルネジを利用していると思われるが、算盤の珠との接触部はネジ山の頂点があたっているのではないか?ネジ山がない場合と比べて差はあるのだろか?

*1:実はTwitterのプロフィール欄のある計画に含まれるブログの連続執筆の訓練も兼ねていたりして。

*2:フィードバック制御的なものは付いていないと思われる。

*3:私だったら下側につけるかな

*4:こういう簡単なものは研究の対象にならないでしょうが需要はありますよね。