高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

鳥羽商船高専B わっ!鳥羽・Sea(ワッ!トバ・シー)

 陸上競技円盤投げやハンマー投げのように、回転の中心から離れたところに物体の重心があり、円運動しながら速度を高めて物体を放る機構に対して「遠心力を利用して・・・」と表現されることが少なからずあり、違和感を覚えるのは理系でも少数派であろうか*1

 円盤投げやハンマー投げの場合、回転速度を上げるほど円盤により強く作用する遠心力を同じ回転をしているヒトが感じ、そして拮抗するために体を傾けるなどして発生する向心力で釣り合わせようとするので、遠心力を利用していると言っても間違いではないだろう。しかし、高専ロボコンで名機として選ばれた奈良高専の「Star King(スターキング)」が代表的であるが、回転して物体を放つ機構の場合は、接線方向に生じる慣性力*2が回転速度を速めることによって高められ、向心力がなければ接線方向に飛んでいくだけのことであり、遠心力を使っていないのである。

 この「遠心力問題」を20年以上前に1994年第6回「スペースフライヤー」に関することで指摘したことがあったし、時々ネット上で他の方々が「小さな声」で指摘していることもあったが、今日でもよく間違えられている。ゆとり教育の影響かと一瞬思ったが、間違いが散見され、あろうことか高専ロボコンを企画・アドバイスをしていた年配の方々が関わった文書でさえ間違えていたのである。実は根が深い問題なのではないか?

奈良高専:スターキング
(NHKのアナウンサーがディスクを遠心力を利用して飛ばすと言っていたが、 これは、回転による慣性力によって接線方向に飛んで行くわけで、そのへ んのところはちゃんと勉強しておいてほしいです。)

出典:The Internet Archiveに残る Space Flyer より

 

奈 良 高 専 「ス タ ー キ ン グ 」(1994年 ロボ コ ン 大 賞)
第7回 ロ ボ コ ン94「 ス ペ ー ス フ ラ イ ヤ ー」で大 賞 を受 賞 した「StarKing」 は遠心力 を利用 したアイディアでディスクを飛ばし,話 題 をさらった。

出典:実学と夢物語の間のパワー 座談会 ロボコン10年を振り返る――<下>, P.436 電学誌, 118巻 7/8号, 1998年

 非慣性系から見ている状態、つまり回しているものの上で一緒に回って見ている状態と、その回っているものから降りて静止しているところから見た状態とで混同されているのかもしれないし、公転させて飛ばすものに対する表現が開発・発明されていないだけなのかもしれない。幸い、今回紹介する鳥羽商船高専Bチームの「わっ!鳥羽・Sea(ワッ!トバ・シー)」の出場校データチェックのページの記述には「遠心力」という言葉は無かった。

試合内容

  2回戦第1試合に登場し、富山高専本郷キャンパスBチームの「射輪士(イワシ)」と対戦したが、1点も入れられず、3対0で負けてしまった。

鳥羽商船高専B わっ!鳥羽・Sea(ワッ!トバ・シー) 画像URL

東海北陸地区大会 出場校テータチェック ページより

上記サイトの都合で画像が閲覧できないことがあります。

特徴

  • 移動システム:二輪駆動?
  • 射出エネルギー源と格納方法1:二次電池
  • 射出エネルギー源と格納方法2:ゴム?
  • 射出装置1:回転利用カタパルト?(汎用)x1
  • 射出装置2:未確認
  • 照準/測位システム:ウェブカメラと手許のタブレット端末を利用した照準装置?
  • 通信システム:wifi
  • コントローラー:タブレット端末?
  • 操縦者:1名
  • 自律機能/自動機能:未確認
  • 妨害装置:なし

射出装置

  三つの輪が搭載可能な回転装置で輪を公転させ、放つ射出機構を採用している射出装置がある。輪が自転しているかは分からなかったが、高専ロボコンの名機"Star King"をリスペクトして作られたと思いたい。

 輪を放つときに可動する機構が回転軸上部付近にあるとみるが、構造がよくわからなかった。得点は入らなかったが、輪を飛ばせてはいたので、機構としては完成しているのだろう。どういう機構なのか知りたいところである。

 データチェックのページにはゴムで長い輪を投げるとあったが、それらしき機構が見当たらない。重量制限のために取り外したのだろうか?

照準システムとコントローラー

 珍しくは無くなったが、それでもまだまだ少数派のタブレット端末をコントローラーとして採用している。タッチパネル上でスタイラスを使い、ロボットにコマンドを与えていたようである。また、ロボットにウェブカメラのようなカメラを搭載してこのタブレット端末で撮影したものをリアルタイムに表示させ、照準システムとして利用していたようである。通信も含めて詳しくは分からないが、構成を知りたいところである。ロボット側にはLinuxなどのOSが動きそうな小型のコンピューター・ボードぐらいは搭載していそうである。 

*1:理系だったら違和感を覚えられたし。

*2:この場合等速直線運動をし続けようとする運動