高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

熊本高専八代キャンパスB 挑戦車(チャレンジャー)

 初めてコメントを頂きました。しかも、現役のロボコン参加者からです。これは嬉しい。今年だけではなく、昔の大会のこととか、コメントを下さい。

 時間設定を間違えて書いている途中で公開されてしまいました。

凄すぎるので書くことが多くなる

 さて、持ち越した八代の挑戦車(チャレンジャー)ですが、見れば見るほどわからないことや凄いことが出てくるので、即座に書けることだけを書いて、全てのチームについて書き終わったら、書き足そうと思います。私が参加した頃とは比較になりません。

優勝の可能性を持っているこの上ない挑戦者

地区大会

 地区大会も全国大会も試合運びや相手の調子によっては優勝していてもおかしくないと思わせられる試合内容と出来の良さ。八代Bチームに関わった方々はロボットの能力を思う存分発揮できた満足感を得ながらも、さぞや悔しい思いをしているに違いないと見てきた者を思わせるほどの白熱した試合が目立った。しかしながら、このロボットと同じように優勝の可能性があると衆目一致するチームの方々や、このロボットに注目していた観戦者には、防御・妨害をせず、スナイプに徹した戦いぶりに、堂々とした挑戦者としての恐らく長きに渡って消えることのない強烈な印象を与えたのではなかろうか。

2回戦第6試合

 試合内容を少し詳しく見てみる。地区予選2回戦から登場し、Vゴール可能で軽快に得点を決めてきた都城の「進め!みやこのゾウ」の調子の悪さを尻目に終始リードを保ち58秒でVゴールで勝利。

準々決勝第2試合

 続く準々決勝の鹿児島高専の八砲美迅との対戦もこれまた終始リードを保って51秒でVゴールで勝利。隙を見せた途端にVゴールされる恐ろしさを見せた。

準決勝第1試合

 準決勝で戦った大分高専Bチーム の「Golgoole(グルグール)」には序盤のリードを中央ポールの2本掛けで逆転され、その後8対8と追いつくもVゴールできるポールの前に立ちはだかる相手をの様子をみて、これまでの高速直線弾道から高弾道に切り替えてVゴール勝利。柔軟に戦術変更が可能なことを証明した。

決勝

 地区大会決勝はあの防御システムを持つ北九州高専Bチーム 「Wanna Be(ワナビー)」との対戦であった。前の試合までVゴールが出来ていた1分前後までリードを保つも、通称「花守」と呼ばれる鉄壁の盾で北九州が最後のポールを死守しているのをみて、相手のポールに輪を入れて得点差でも勝てる戦術に切り替えた。この時、9点目を入れた段階でやめておけば良かったのかもしれない。以後なかなか相手陣ポールに輪が入らない北九州が1点追加してどちらもVゴールが狙える状況になったといえども、9対8と八代が依然有利であったが、輪切れが近づいたためスタート地点に戻ろうとしていた。ここで微かな可能性を感じたのか、花守の真下の空間に輪を通してVゴールを狙うのを試したようだ。実際これは輪が入りそうになり、北九州を慌てさせた。それ以後も相変わらず北九州は輪が入らず、両者輪切れを起こして装填しにスタート地点へ戻り、装填が終わって審判の許可を得て、ほぼ同時にスタートを地点を出た。「挑戦車」は先ほど試した戦術を実行しようとするも、北九州の絶妙な位置取りのために、相手側に近づいてVゴールを目指さざるを得なかったため輪を放てず、「Wanna Be」に先にVゴールを決められて敗戦。どちらが勝ってもおかしくなかった。

全国大会

1回戦第8試合

 「屈指の好カード・優勝候補同士の対決」「優勝候補同士」と試合前にアナウンスされ、白熱の試合展開が期待・予想された香川高専高松キャンパス"Beehive"との対戦。どちらも射出装置が一つだけで、1分未満でVゴールが可能である。チャレンジャーが狙撃手ならBeehiveは砲撃手であろう。因みに、八代の「挑戦車」というロボット名は全国大会から「チャレンジャー」に変更されている。

 試合は終始高松がリードしていく。序盤の自陣ポールで八代が二本目のポールを一度外してしまった分だけ遅れたのだ。開始19秒で両者自陣ポールに入れ、3対3。その後は高松のBeehiveが得点してリードをすれば八代の挑戦車が追いつくという感じで、両者は得点を重ねていき開始52秒で両者Vゴールまであと1本の8対8の同点になったが、直ぐに高松BeehiveにVゴールされ(54秒)、八代は負けてしまったが、15秒後にVゴールして試合を終えた。

準々決勝第4試合

 ワイルドカードで復活。対戦相手は近畿地区全国制覇を目指す一角の和歌山高専「梅王(バイキング)」こちらも前の試合のBeehiveと同じく、射出装置が一つの連射が可能で、例えてみれば砲撃手であり、しかも防御システムを持っているところまで同じ対戦相手であった。

 前の試合よりも早く、開始16秒で両者自陣ポールに輪を入れ終えて3対3と並んでいたが、和歌山梅王が開始早々自陣ポール1本目から調子が悪そうで、八代ちゃんレンジャーが20秒で中央ポール2.5m左に入れて3対4とリードし始めた頃には、連射しても中々入らない和歌山梅王との調子の差が明確になっていた。44秒には相手ポール右だけを残してVゴールに王手をかけて5対8と八代チャレンジャーが迫ると、和歌山がそのポールを死守しながらの防戦に切り替えてきたため、八代チャレンジャーは輪の飛ばし方を狙撃型から高弾道型に切り替えた。しかし、和歌山の防空装置がフォークのように邪魔して輪が辛めとられてしまうだけだった。しかも対面して渡り合っている最中に、八代チャレンジャーに防御装置がない隙を突かれ1分3秒に和歌山に自陣のポール右側にいれられていた(6対8)。

 1分17秒過ぎ、輪が尽きた八代チャレンジャーはスターとゾーンで沢山の輪が詰め込まれた輪倉(マガジン/カートリッジ)を交換に入った。和歌山梅王が同点に追いつく、最悪Vゴール勝に至る隙を与えてしまったのだが、和歌山梅王の射出装置は調子の悪さから回復できずにいたのか、彼らの輪は尽きてしまい、八代チャレンジャーは運を掴んだ。6対8で勝利。

準決勝第2試合

 事実は小説より奇なり。大袈裟かもしれないが、予選のない全国大会で*1再対戦が実現するとは、両者ともに予想していなかったであろう。八代チャレンジャーは再び高松Beehiveと対戦することになった。リベンジできたか?

 八代チャレンジャーはまた自陣ポール二本目を一度外してデジャブが起こりそうであった。若干高松Beehiveにリードされつつも開始14秒で両者自陣ポール3本を決め、両者がロボットの性能を限界まで引き出そうとしているのが如実に瞬時に感じられた。

 中央ポールの輪の入れあい移ると、八代が1点差のリードをし始め、26秒には5対6とし、この勢いで八代のリベンジの期待が膨らんだかもしれない。その10秒後の36秒には高松Beehiveが守る高松側ポールの中央を残して7対8とし、勝利を目前にしていたが、43秒に全く防御をしない八代側の自陣ポール左に輪を入れられ8対8の同点に。そして次の瞬間が勝敗を決した。輪を直線的に狙撃するように射出するのではなく、高松Beehiveのお株を奪うような輪を高弾道で射出する態勢に切り替えていた八代チャレンジャーは輪を放った。輪は高松の防御装置を掠め相手陣ポールまで達していたが入らなかった。

 八代は高弾道を直ぐに諦めて、隙間の多い高松Beehiveの防御装置目掛けて輪を放つことに切り替えたが、高松Beehiveが58秒にVゴールを決めてしまった。リベンジならず。

 自陣ポール二本目を外す癖を直したり、防御装置を付けていたらと思うと残念で仕方が無い。

大会後の再戦

 『高専ロボコン 2015年度九州・沖縄地区交流会レポート2日目・3日目〜さぁ盛り上がってまいりました編 | Device Plus - デバプラ』に八代キャンパスのチャレンジャーと北九州高専のWanna beが再対決をしていたレポートと映像が掲載されていた。

 リベンジはできたのだろうか?防御システムを備えて「エリマキカメレオン化」してみたらどうだったのだろうか?


北九州高専ワナビー vs 熊本高専(八代)チャレンジャー - 高専ロボコン2015九州・沖縄地区交流会レポート

特徴

熊本高専八代キャンパスB 挑戦車(チャレンジャー) 画像URL

NHK高専ロボコン ライブストリーミング サイト 九州沖縄地区大会 出場校データチェック ページより

上記サイトの都合で画像が閲覧できないことがあります。

  • 移動システム:クローラー
  • 射出エネルギー源と格納方法1:2次電池
  • 射出装置1:2軸1?モーターの挟み型ローラー(横挟み)(汎用)x1
  • 照準/測位システム:自陣・中央はKinnect画像処理(ポール位置検出)、相手陣はなし?(目視)
  • 通信システム:Bluetooth(操縦者コントローラー―制御用コンピューター間通信用)、ZigBeeXBee利用、Kinnect―制御用コンピューター間通信用)
  • コントローラー:ゲームパッド(Dualshock3とその専用モジュールのSBDBT(Bluetoothモジュール))
  • 操縦者:1名
  • 自律機能/自動機能:射出方向、仰角および射出速度の自動調整?
  • 妨害装置:なし

クローラー

 恐らく大会唯一かもしれないクローラーを採用している。相手からの妨害の為の輪が積み重なろうが問題ない。ところが、速度は他の駆動方式ほど速くない。信地展開*2して曲がれるようだが、超信地展開*3して進行方向を変えているところは見なかった。砲塔が回転するので必要ないと思うが、構想・デザイン・設計の最初はどこから始めたのか非常に興味が湧くところである。ひょっとして、ガルパン*4が流行っているから戦車にしようとしたのでは?(笑)

ゴルゴ13

 準々決勝前までの試合で無駄輪の少なさを見て精度の良さを感じずにはいられなかった。12投中3輪の外れ、11投中2輪の外れ。全ての試合の統計情報がないので印象でしかないのだが、直線的な弾道と合わせてスナイパーと呼ぶに相応しい性能がある。

 抜群の命中精度を実現させているのはKinnectを利用した画像処理でポールの位置が3次元的に把握でき、射出方向と仰角を調整できるからだろう。近年Kinnectや画像認識技術を使って目覚ましい成績をあげてきた鈴鹿高専のロボットのように、恐らく、対戦相手によっては完全に全自動にもすることも可能であったと想像している。ここから先は想像の域を出ないが、ほぼ手動で走行しながら砲塔を回すとポールをロボットが自動検知して、命中可能な位置に来たら、ロボットを光らせているLEDライトを黄色にして操縦者に知らせる仕組みだと推測する。もし誰か詳細を知っていたら教えて下さい。

マーカー無くても狙える鋭い目?

 前回大会までのKinnect利用ではマーカーが必要あったようだし、そのマーカーも一つだけしか追従できなかったようでしたが、八代はポールの区別をどうやっていたんでしょう?ソフトウェアの技術的な進化があったことを想像させますが、実際のところはどうなんでしょう?手動で選ぶにもポールは同じような色と形をしているのが複数あるので操縦者が選んであげないとうまくいかないように思います。

何故カメレオンに似せてあるのか?

 輪の射出が可能になった時などの様々な状態に合わせてロボット表面の色を変え、直線的に輪を射出射出する様子がちょうどカメレオンが舌を高速で伸ばして餌をとる様に似ているからだと思うし、多分そうだろう。ロボットの機能と外装がこんなにマッチしているのは珍しい方ではないか?

 そういえばカメレオンがモチーフなのは初めてではないだろうか?*5

実は命中精度が物凄く悪かった

 第158回ロボコニストラジオリペアによると、夏休みも終盤に指しかかろうかという時期まで輪がポールに一つも入らなかったそうですが、輪を曲げて装填した途端にあの命中精度になったそうです。そんな苦労や秘密があったんですね。


第158回 ロボコニストラジオリペア② 20151228

後ほどまだまだ書き足す予定

 まだまだ謎な部分と深く追ってみたいところがあるので、かなり後になりますが、調べて書いてみようと思います。

追記

1月11日

 2014年第27回大会で八代高専は初の全国制覇と初の大賞受賞を成し遂げたのを思い出し、何故「挑戦者」をもじった「挑戦車」という「挑戦」を名前につけたことを疑問に思いました。前回大会で制覇したときの主要メンバーが5年生で卒業してしまい今大会は後輩達が受け継いで挑んでいることから、その卒業生達の偉業を越えようと挑戦する決意が込められていたのではと想像しています。

1月20日

 映像をよく見たら、八代挑戦車は、北九州Wanna beとの試合でVゴールを決めるために、高弾道ではなく北九州の花守の下を狙っていましたね。以前書いていた高弾道の文章を取り消し線で残さずに修正しました。

7月某日

 全国大会の試合内容を追記し、特徴を修正しています。

 カモフラージュについて、ひょっとすると同じような画像認識をするロボットが現れた場合に、相手の画像処理を撹乱する目的があったのではないでしょうか?

*1:予選があった全国大会は第3回、第21回、第22回。

*2:クローラーの片側だけを遅くするか停止させて曲がる

*3:左右のクローラーを逆方向に回転

*4:ガールズ&パンツァー(GIRLS und PANZER)のこと

*5:カメレオンがモチーフなのは他にもあるそうです。