松江高専B Tri Shoooter(トライ シューター)
ひと月で仕上げたとは思えない信頼性
ひょっとしたら、開発期間がひと月しか無かったら、この「Tri Shoooter(トライシューター)」が全国制覇していたのではないかと思わせられるほど、短い開発期間で抜群の信頼性を確保していた。
地区大会では決勝戦を含め4戦を勝ち、何れも余裕を持ってVゴールで勝利できている。2回戦でVゴール可能な呉高専Aチームの「Infinity-1(インフィニティインバース)」と接戦を繰り広げるかと思いきや、呉の不調で難なく勝っていた。いずれの対戦相手もTri Shoooterと比べると安定性・信頼性で大きな差があった。
地区大会では骨のある対戦相手が居なかったようだが、全国大会では実力のあるチームが揃い、しかも初戦が1回戦第1試合で、地区大会でVゴールを決めている都城高専の「進め!みやこのゾウ(ススメミヤコノゾウ)」との対戦であった。開始24秒で松江が自陣から中央のポールまで獲得し0対6と調子が悪そうだった都城をリードしていたが、都城が徐々に復調しだすのとは対照的に松江は相手陣ポールに輪がなかなか入らなかった。都城も自陣ポール全てに輪を入れ、中央ポールにも全て輪を入れ、57秒に6対6の同点に追いついてきた。ここから両者の接戦が始まった。先に都城が、続いて松江が、輪切れになり、輪を1つずつスタートゾーンで装填しては相手陣のポールを狙って撃つというのを繰り返し、命中精度の勝負となっていった。先に相手陣ポールに入れたのは松江であったが、直ぐに都城も追いつくのを繰り返し8対8の同点となり、先に入れた方の勝ちとなる状況になった。松江は先にVゴールを狙ったが外してしまい、輪を装填している間に都城に2分12秒でVゴールを決められて負けてしまった。しかし、松江も2分42秒でVゴールを決めた。
松江高専B Tri Shoooter(トライ シューター) 画像URL
NHK高専ロボコン ライブストリーミング サイト 中国地区大会 出場校データチェック ページより
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学生ロボコン
資料が何故か少なくて*1憶測になってしまうし、外部から見てる者の視野の範囲でしかないのだが、敢えて書いてみる。
昨年、高専生とその専攻科、大学校も参加可能となった、これまで大学ロボコンと呼ばれていた学生ロボコン大会*2にこのTri Shooterを作った学生達を含む松江高専のチームが参加していた。手動型ロボットで参加していた松江高専は、大会トーナメントで優勝し日本代表となった早稲田大学の手動型ロボットと1回戦で対戦した。デュースにまで持ち込んで引き分けたが、ルールにより負けてしまった。初戦負けとはいえ、国内大会優勝チームと引き分けたのだから、賞賛されてもよいだろう。
松江高専のロボットは飛び跳ねてジャンピング・スマッシュを打つらしかった。勝敗にどういう影響があったのかわからないのだが、ひょっとするとそのジャンピング・スマッシュに拘らなければ勝っていたのかもしれない。だがそれは拙速な憶測に過ぎないだろう。ちょっと前の高専ロボコンをみていた方ならば、跳ぶロボットといえば松江高専を思い出すのではないだろうか。学科のページでこんなイラストを公開しているぐらいだから、意識もしているのではないだろうか。学生ロボコンでもその印象を植え付けにきたのではないかと想像を膨らませることができた。
特徴
- 移動システム:四輪オムニホイール
- 射出エネルギー源と格納方法1:圧縮空気(ペットボトル)
- 射出装置1:エアシリンダ押出カタパルト(パチンコタイプ)(自陣)x3
- 射出装置2:エアシリンダ押出カタパルト(パチンコタイプ)(中央・相手陣)x3(1)
- 照準/測位システム:超音波センサーで距離計測?
- 通信システム:未確認
- コントローラー:ゲームパッド
- 操縦者:1名
- 自律機能/自動機能:未確認
- 妨害装置:なし
射出装置
中央ポールへは3本同時か、中央の射出装置だけで狙うようであった。相手陣ポールへは中央の射出装置だけを利用していた。中央・相手陣ポール向けの圧縮空気の供給のしかたはどうなっていたのだろうか?弁があって供給を切り替えていたのか、独立していたのか。独立していたとしたら、同時発射させるのにどういう工夫をしていたのだろうか。というのも、射出にずれがあると要らぬ慣性モーメントが働いて射出方向がずれると想像したからである*3。
出場校データチェックのページには「圧力計を利用して・・・空気圧を制御」とあるが、圧力計は圧力センサーのことだろうか?流量調整可能な電子式レギュレーターを搭載していたのだろうか?それとも単に圧力計を目視で確認していただけなのだろうか?
超音波センサー
ポール獲得精度の印象から、自陣ポールと中央ポールに対しては超音波センサーが有効だったのではないかと想像している。相手陣ポールに対しては超音波センサーを当てにしていなかったのではなかろうか。精度に有意な差があるような印象を持っている。
地区大会でも相手陣ポールへの輪の入りが悪い印象であったが、全国大会でも同じような印象を受けた。改善はしなかったのだろうか?
スポンサーからの技術支援
因みに、スポンサーのROHM株式会社が運営しているDevice Plusというウェブサイトに超音波センサーを使ってみる記事があるのを見つけた。これから使ってみようという学生には参考になるだろうか。カリキュラムに電子回路だとかメカトロなどがない、まだそんな授業を受ける学年ではない学生の一助になるのではないだろうか*4。
導入・初心者向けではあるが、スポンサーが技術的なサポート情報を公開していて、ロボコンに参加する学生の間接的な技術支援をするのは良い傾向だと思う。企業のカスタマーエクイティを積み上げる戦略*5に乗ってしまうわけだが、一般に公開しているわけだから公平であり*6、 上手く利用していくかはチーム次第である。ただ、ロボットアームや歩行、視覚などのセンシングに関してはどうだろう*7。