高専ロボコンデータベースをつくっていくブログ

高専ロボコン第30回大会を終えてこれからも面白いロボコンであってもらいたいということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

第31回高専ロボコン大会雑感 その1 昔も自動機がありましたね

 第31回大会を観戦して、これまでになかった感動を覚え、第31回で遂にここまで来たのかという感じを抱いてしまいました。全チーム自動機が必須であるだけでも凄いと思いましたし、ヒトでは何本も立ちそうもない高いテーブルの上に自動機でいとも容易く何本もペットボトルを乗せるチームが出てきて、さらにその中にはフリップまでさせていたチームもありました*1。しかし、これまでの大会を思い出してみると、自動化・自律化に関していえば、ロボットコンテストと名乗った当初の大会から存在していましたし、自動機が必須な大会はかなり昔からありました。さて、私は一体何に感動したのか、遂にここまで来たというのは錯覚だったのか、そしてこれまでとの違いは何だったのかを高専ロボコンファンなりに探りながら記しておこうと思います。

これまでの自動化・自律化

 高専ロボコンの自動型のロボットは最近になって登場したわけではなく、第2回全国大会(オクトパス・フットボール)まで遡ります。第2回全国大会に出場した沼津高専「ダッシュエイティナイン」はボタン一つでゴールまで辿り着く完全自動化を目指したものでしたが、スタート地点でボールを取りこぼした上に前に進む気配もなく負けてしまったのが印象的でした。一度でも成功していたら、その後の課題やルールに影響があったかもしれないと想像を巡らせてしまいます。

 第3回以降は、人体拡張的な一部分を自動化をしていたロボット、自律的に動いてくれるミニロボットを搭載したロボットもありました。また近年は完全自動化を目指したロボットが再び登場するようになりました。主だった大会とロボットを挙げてみます。

  • 第2回大会(オクトパス・フットボール)で沼津の「ダッシュエイティナイン」(前出)。
  • 第4回大会(ニュートロンスター)に、これも沼津高専ですが、人間でも積むのが難しそうなλ字に箱を積む機能が走行系以外は自動化されているらしい「Λ-'91号」がありました。
  • 第10回大会(花開蝶来)には、得点を相手チームにとられないようにしつつ芸術点を得るために、プランターに置く花が自動で柱を上り始めたり綺麗なパフォーマンスをするものがありました。福井高専の「G.G.ウォーカー」は花などが複雑な行動をとりながら自動的に咲いていましたが、コンピューターや電子回路*2の類は一切使用していないように見えました。
  • 第11回大会では、ルール上、フィールドに接地しながら得点しようとすれば種子の移動などの自動化は必須でした。様々な自動化ロボットや仕掛けが披露されましたが、なかでも全国大会に出場した八戸高専イカロス」と小山高専「いろとりドリ」は、周囲をセンシングして直ぐに反応するだけではなく、搭載していたマイコンによって自身で判断を下し、様々な戦術が行える能力を備えていました*3高専ロボコンにおける自律型の最初の例といえるでしょうか。実際に知能的だったかどうかではなく、その余地があったかどうかという点に着目しています。
    • 八戸高専イカロス」の種子は、操縦者から赤外線経由で出動の指令が与えられると本体から真っすぐ飛び出すと、ローターリーエンコーダーで移動量を計算しながら目的付近まで近づき、超音波センサーで位置補正と相手種子の妨害回避を行い、さらにカラーセンサーも加えて島の探索をして目的の島に辿り着くという、当時としては(移動)ロボットらしいロボットでした*4。また操縦者が戦術変更をしたければ、本体内に搭載時の出動命令前に赤外線で、最終到達地の島や途中の立ち寄るポイントの追加や変更、さらには島周辺で相手の種子を払いのける行動をするかどうかなどの変更を伝えることができました。種子の行動は簡単なフローチャートに纏められるほどの簡単なものですが、島の探索時には各種センサーを駆使して行動することができるので、誤認することはあるでしょうが、状況を判断してより高度な行動を行わせるソフトウェアの作り込みの余地があったと思います*5
    • 小山高専「いろとりドリ」についての詳細はこちら
  • 第13回大会(ミレニアムメッセージ)にもポールを上り造形物を置く様々な自動機がありました。長岡高専の「長岡猿軍団」は面白かったですね。
  • 第17回大会(マーズラッシュ)はルールで手動機の他に自動機が必須となった初めての大会でした*6
  • 第18回大会(大運動会)も最終課題の壁を上ってバトンゴールする自動機が必須な大会でした。
  • 第25回大会(ベスト・ペット)は、課題とルールにより操縦者のコントローラーなしに伴走者が指示をしなければなりませんでしたが、その指示を読み取るか各種のセンサーからの情報を頼りにロボットが判断して動く謂わば半自律型ともいうべきロボットで臨まなければなりませんでした。中でも Kinect を駆使して伴走者を追跡したり、ジェスチャーを理解して動作していた(らしい)小山高専の「フレンドルフィン」や鈴鹿高専の"Emperor"の対決は非常に印象深いものでした。また、この頃から画像処理を始めるチームが目立ってきたように思います。熊本高専八代キャンパスの「ハルちゃんの羊」も画像処理をしていました。その魂と技術の蓄積は続けられ、後の大会で活躍するロボットが登場するに至ったと聞きます。
  • 第26回大会(Shall We Jump?)も操縦者のコントローラーなしのルールでした。なかでも鈴鹿高専のメルシーそしてその相棒ロボットのダルシーは共に高度な自動化が実現されていました(簡単な紹介はこちら)。メルシーを沼津高専「ダッシュエイティナイン」以来の完全自動機としたいところですが、ルール上、ヒトと一緒に跳ぶなど、ヒトの動きに追従する必要があったので、言い換えればヒトがいないと動作が出来なかったという点では、次の大会を待たねばならなかったと私は思っています。みなさんはどう思っているでしょうか?
  • 第27回大会(出前迅速)では、蒸籠を落とさないために台のバランス保持や段差の克服を自動化しているチームは多数ありましたが、蒸籠を受け取りゾーンに届けるまでを全て自動で行う鈴鹿高専の「エール」が登場しました。ほぼ完全に自動化されたロボットとしては、沼津高専の「ダッシュエイティナイン」から四半世紀掛かって、目的を自動で果たせる(ゴールまで辿り着ける)ロボットが登場しました*7
  • 第28回大会(輪花繚乱)でも各種のセンサーを使って様々な自動化が実現されていました。熊本高専八代キャンパスの「挑戦車」は、自動化はもちろん人体拡張ともいうべきでしょうが、kinectと画像処理を駆使した狙撃手のような(半)自動照準には驚かされました。*8
  • 第29回大会(ロボット・ ニューフロンティア)では、奈良高専の「Δ(デルタ)」、大分高専の「烈覇」、明石高専の「あさごん」など、箱を積むところを自動化していたチームの活躍が目立ちました。それらのチームのロボットは、箱を積むのに、人間の操作ではズレが大きくなるので、自動化して正確にずらして積むことで、何段でも積んでしまえそうな機構がありました。

上記以外にもあると思います*9。コメント欄で教えてくださると有難いです。

つづく

*1:奈良高専でしたかね?

*2:電気回路ではない

*3:ちょっとした改造と拡張を行えば今でも利用できるのではないでしょうか?電子デバイスなどは今となっては古く、ディスコンなものもあるかもしれませんが、第31回大会のベースとしてそこそこ使えたりしませんかね?

*4:最新の移動ロボットは例えばこんな感じで作られていますが、力学的考慮に基づいたモーター制御の有無、DCモーターとPID制御/フィードフォワード制御されている三相ブラシレスDCモーターの差、そしてウォッチドッグタイマーによる周期割込みとROSなどの差はあるでしょうが、20年以上前に基本的なことは行えていたと考えています。

*5:詳しくは、八戸工業高等専門学校紀要第34号(1992.12) 『平成10年度NHKアイディア多血ロボット子運テスト「イカロス」の開発』(釜谷博行、池田高直)を参照。

*6:全国大会決勝戦の松江の「それいけアルゴン」と旧詫間電波の"Fever"の妨害合戦を私は楽しめました。妨害用のロボットは自動化されていたのでしょうか?

*7:蒸籠を受け取るときは操縦者が指令していました。また、全国で1勝したときに15枚運びきっています。

*8:照準の自動化はどの程度なのでしょう?

*9:私事ですが、第6回大会出場の「大雪山ジムカデ号」はボタン一つで予めプログラミング/ティーチングされていた通りに動く完全自動化を目指した機能が開発されていました。しかし、機能の開発の優先度が最低、コンピューターボード・電子回路・モータードライバー等の信頼性、無くても勝てるなどの理由から実戦投入は諦め、非常に小さな実証機(全国大会番組には映しだされている)で機能することを確かめた程度に終わっています。ついでに、付け加えておくと、その自動化システムはもう一つのチームのロボットにもそのまま使える代物でした。