読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

最近の高専ロボコンに感動したブログ

高専ロボコン第30回大会も近いということで最近の高専ロボコンに感動した自分が満足できそうなデータベース構築のために情報を蓄積していくためのブログです。

徳山高専A 捲土重来(ケンドチョウライ)

 この記事の資料を作っているときに重力波検知の報道を見聞きしました。日本に一月も滞在して観光していったという相対性理論アルバート・アインシュタインの偉大さを感じました。

 それにしても極めて微かな変化をよく捉えたものです。また、摂動的現象が起こりそうな天文学的イベントをよくぞ管理していたと思えます。

 直ぐに役に立たない研究に大金を投じることに異議を唱えたり嫌悪感を覚える方がいらっしゃいますが、重力波検知からさらに理論的な発展を経て、ここからは素人の妄想ですが、重力レンズを使ってそういったエネルギーを大量に1点に集中させることもできるようになり、核融合反応に必要な最初のエネルギー源にすることで小さな人工の太陽のようなものまで手に入れられるようになるかもしれません。

今大会で最も機能美を感じる機体

  一目見て、高級機械式時計フランクミューラー・エボリューション3の象徴的部品、「重力」の影響を最小限にして出来るだけ正確に時を刻むための3重軸式トリ・アクシャル・トゥールビヨンを思い出させるくらいの機能美を感じました*1。金色や銀色に輝く鍍金処理が施されていたら、その美しさは高専ロボコンでは頂点を極めていたでしょう。

www.franckmuller-japan.com


Franck Muller - Revolution to Evolution

美しさは強さの十分条件ではない

 ロボット「コンテスト」なので機能美を評価して表彰したいところだが、高専ロボコンは実は高専ロボット「トーナメント」なので勝たないといけないし、勝たなくてもテストランで強さをアピールしておかないといけない。徳山高専Aチームの「捲土重来(ケンドチョウライ)」は全国大会のテストランでは2分台でVゴールが出来たそうだから、地区大会からそうだったのではないかと思う。だから全国大会に選ばれたのだろう。

 地区大会の初戦は1回戦第1試合で、松江高専Aチームの「それいけ!にしだマン」との対戦であった。本来なら準決勝ぐらいであたってもよさそうな実力派同士の対戦であった。序盤の自陣ポールの獲得では徳山がリードしていたもの、中央ポール全てを獲得するまでに同点と逆転を何度も繰り返すシーソーゲームの接戦になり、どちらが勝ってもおかしくなかった。開始2分過ぎ、相手陣ポールへ入れる段階になっても7対7の同点であったが直ぐに松江に8点目を決められれピンチに陥った。しかも徳山に撃てる輪がなくなったため、補充しにスタートゾーンへ戻らざるを得なかった。その隙にVゴールの9点目の射出位置を悠々と調整され、徳山が再度競技フィールドに戻ったと同時にVゴール(2分54秒)を決められて負けてしまった。今大会で白熱した接戦の一つに数えられるだろう。テストランとこの初戦の接戦が評価されたのか、全国大会進出を決めた。

 全国大会の初戦は1回戦第7試合、輪の一斉射出で最短12秒で試合に勝利可能な産業技術高専荒川キャンパスの「荒鯊(アラハゼ)」との対戦であった。開始15秒で全く得点できないうちに負けてしまうところであったが、0対7と徳山側のポール2本に荒鯊の輪が入らず、逆転の可能性が残された。荒鯊は連射機能がなく、スタートゾーンに戻ってチームメンバーが輪の装填をしなければならず、それに時間がかかるからである。徳山「捲土重来」は荒鯊が再び出てくるまでに中央ポールまで全て入れ終わり、6対7と荒鯊に迫った。再び荒鯊が競技フィールドに戻って輪を放ち、大きい輪で8本目を獲得し、6対8と突き放された。徳山はピンチになり、相手陣ポールへの輪が入って欲しいところだが、なかなか入らない。再度輪の補充から戻ってきた荒鯊にVゴールを決められて負けてしまった。

徳山高専A 捲土重来(ケンドチョウライ) 画像URL

NHK高専ロボコン ライブストリーミング サイト 中国地区大会 出場校データチェック ページより

上記サイトの都合で画像が閲覧できないことがあります。

特徴

  • 移動システム:二輪駆動+四輪補助輪
  • 射出エネルギー源と格納方法1:2次電池
  • 射出装置1:2軸2モーターの挟み型ローラー(縦挟み)
  • 照準/測位システム:なし(目視)
  • 通信システム:未確認
  • コントローラー:自作
  • 操縦者:1名
  • 自律機能/自動機能:未確認
  • 妨害装置:あり(全国大会から)

駆動システム

 車輪が使えるロボコンで過去によく採用されていた左右独立した駆動力を持つ二輪駆動システムである。クローラーと同じく、同じ方向に回転させれば前進と後進、逆方向にすれば回転ができる。

 補助輪が4つあるが、揺れてないところをみると、台車の僅かな「たわみ」を利用してサスペンション代わりにし、真ん中の駆動輪がもっとも接地力が強くなるようにしていると想像する。 最も直感的に操作しやすく、制御的にも簡単であり、私も好きな駆動システムである。

 照準において機体(車体)を左右方向に調整する必要がないとする設計思想があっても不思議ではないが、実際はどうだったのだろう?メカナムホイールを採用する予定はあったのだろうか?

射出機構

 輪をローラーに送り出す仕組みがよくわからなかったが、製作者の方がTwitter上でその仕組みをクローズアップ公開していた。螺旋を使った機構で輪の後端を押し出すことにより、ローラーに引きずり込ませていました。この部分は、樹脂製の部品が多いが、おそらく3Dプリンタで出力された部品ではなかろうか?

照準と制御

 照準調整は全て操縦者が行っていたようだ。ローラーの回転速度を指定回転速度に保てるようにしてあるのであれば、その方法はどのような方法であったのだろうか?

設計

  Twitterなどの情報から判断すると、CADにSolidWorks社のを使っているようだった。一時期スポンサーとして参加し、各高専に無料で使用させていたのであるが*2、現在はどうなのだろうか?

 いきなり設計から始めることができたのだろうか?幾つか試作したのだろうか?そのあたりが謎である。もし試作もないか一度きりだとすれば、「本当は」詫間キャンパスに次ぐ成績を残してたきた徳山高専が、CADはおろか設計図も描かずスクラップ・アンド・ビルドを只管繰り返すという高専ロボコン界最強を謳われた香川高専詫間キャンパスとは、瀬戸内海を挟んで地理的にもプロセス的にも対極にいることになり、非常に興味深い。

 それにしても「曲線」と「繰り返し」を多用する設計は、製作設備が整っていなければ設計したくないはずだ。3Dプリンターとレーザー加工機があってこその設計だろうか?

製作

 全国大会番組でも紹介されたが、最近の徳山高専といえば、3Dプリンターである。3Dプリンターを駆使しして製作した部品を使って2013年開催の第26回大会"Shall We Jump?"で全国制覇したのだった*3。授業のために学校で、または研究のために研究室で購入されるようになったこともあったが、この優勝を気に高専ロボコンで3Dプリンターで部品を作るところが多くなったように私は感じている。徳山高専がこのとき作ったロボット「色とりドリィ」は鞭の代わりに飴玉をロボットにぶつけて指示をだすものであったが、文字通りではないが、3Dプリンター利用の先鞭をつけたと言ってもよいだろう*4。そして昨年の覇者、八代高専も3Dプリンターを使って製作した部品を使用していたのである*5高専ロボコンで優勝する条件に3Dプリンターが必要と言ってしまいそうになるが、徳山高専で利用している3Dプリンターは次の機種(直下のそれぞれの枠内)であるらしい。そのほかにも無印(無名メーカーということだろうか?)のがあるとのこと。

UP Plus2 3Dプリンター(白)

UP Plus2 3Dプリンター(白)

 

 徳山高専が優勝してから数年経ち、3Dプリンターだけではなく、レーザー加工機で厚い木材を加工することにも挑戦し*6、今回の「捲土重来」を完成させた。導入しているレーザー加工機はオーストリアのTrotec社のもののようで、売り上げ高では世界最大のレーザー加工機メーカーであるらしい。

 切断面が全て黒色であったのだが、レーザーの熱で炭化したのだろうか?素材にベニア板を利用していると出場校データチェックのページに記されていたが、ベニヤ板の端面から繊維が剥けてこないように特殊な薬品でも塗っているのであろうか?

環境に恵まれていればこそ

 後日、ロボットのことを付け足すつもりであるが、ロボットよりも環境の方に注目してしまった。それほど注目せざるを得なかったのである。環境に恵まれていればこそ生まれるものもあるわけで、徳山高専にはそういう方向で今後も素晴らしい、機能美のあるロボットを作り続けてもらいたい。目指すは、始めは電気工学を学んでいたが、仕事を頼まれるごとに風洞実験なども貪欲に取り入れ、「口紅から機関車まで」様々なモノをデザインしていったレイモンド・ローウィだろうか*7

 全国大会の番組ではtweetしている間に部品が(1つ)できあがると伝えられていたが、正確にはtweetしている間に6個以上も部品が出来上がるようだ。脅威の生産能力である。高専ロボコンで占有できるのかは分からないが、利用できるとすれば、優勝した年のことを教訓に増強したのかもしれない。

参考:徳山高専だより 2013年度 No.67

 最近はファブと呼ばれる3Dプリンターやボール盤、小さな旋盤などが借りられる小さな工場が都心のそれもど真ん中に次々と誕生している。近い将来中核都市以上であれば、どこの都道府県にいっても利用できるようになるのかもしれない。大会前日に部品が壊れても会場近くのファブに入って製作することも容易になるのだろう。今のところは会場に工作機械を持ち込むしかなさそうである*8

f:id:Matthew:20160105081935j:plain

*1:捲土重来は2軸だからエボリューション2のほうが適切だったでしょうか?他にも3重軸式を採用している高級時計メーカーはあるようですが、とりあえずフランクミューラーでしょう。

*2:15年ぐらい前のことでしたっけ?

*3:3Dプリンター使用部品で勝ったというのは大げさでしょうか。

*4:3Dプリンターで製作された部品を最初に使ったチームでしょうか?

*5:実は確認が取れていないんですが、アップライトやサスペンションまわりの白い部品が3Dプリンターで製作されたものだと耳にしました。

*6:未確認なんですが、前回以前から徳山高専も大島商船高専のように木材を多用したロボットを製作していたのでしょうか?

*7:ちょっと古いぞ(笑)

*8:高専ロボコン会場に3Dプリンターを持ち込んだチームがあるそうですが、どこなのでしょう?